日中韓と日中首脳会談に見る温度差と中国の本気度
5月9日、東京で開催された日中韓首脳会談(写真左は固い表情のままの李克強首相)
9日、日中韓とともに日中および日韓首脳会談が行われた。朝鮮半島の非核化に関する温度差はあったものの、中国は初めて「歴史問題」で譲歩し、拉致問題への協力を示した。中国の対日融和策の本気度が窺われる。
非核化プロセスに関する温度差
9日午前、安倍首相は中国の李克強首相(国務院総理)と韓国の文在寅大統領とともに、日中韓首脳会談を行なった。中国は本来、日中韓首脳会談は経済を中心とするものなので北朝鮮問題は扱わないと言っていたが、結局、朝鮮半島の非核化問題が中心テーマとなった。
3ヵ国とも、南北首脳会談後に発表された「板門店宣言(パンムンジョム)」を高く評価し、国連安保理決議に従うことで意見が一致したが、日本が「完全で検証可能かつ不可逆的な方法での非核化」を主張したのに対し、中韓は朝鮮半島の完全な非核化は望むものの、あくまでも同時に対話を重んじるという姿勢だ。
そこで9日の深夜から10日の未明になってようやく発表された共同声明では、この関連部分に関しては以下のようになった。
――われわれは、朝鮮半島の完全な非核化にコミットしており、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定の維持は、共通の利益かつ責任であることを再確認する。関係国の諸懸念に関する、関連国連安保理決議に従った、国際的な協力と包括的な解決によってのみ、北朝鮮にとって明るい未来への道がひらけることを強調する。
中韓の非核化と対話に関する姿勢
韓国の考え方は板門店宣言で明らかにされているように、「完全なる非核化」を目指すという、蓋然的なものだ。その具体的な道のりに関しては北朝鮮を配慮して明示していない。
一方、中国は、4月27日付のコラム「金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ」に書いたように、北朝鮮の希望をそのまま反映させたようなプロセスを描いている。すなわち北朝鮮が主張するように「段階的に非核化していく」ことに理解を示さなければならず、「圧力をかけたから北朝鮮が対話路線に転換する気になったと思ってはならない」という考え方を基本とする。もし「圧力をかけたから」と解釈してしまうと、米朝首脳会談に到るプロセスにおいても「圧力をかけ続けること」が優先され、対話路線は破綻するだろうというのが、中国の主張である。
だからこそ金正恩委員長は5月7日から8日にかけて再度電撃訪中し、大連で習近平国家主席と再会談したのだ。