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中国、対日微笑外交の裏──中国は早くから北の「中国外し」を知っていた

2018年5月7日(月)12時52分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

しかし金正恩の方が、策略において上手だったことになる。

李克強来日を可能ならしめた米中関係険悪化

5月8日に来日する李克強首相(国務院総理)の訪日が決まったのは、米中関係の悪化による。アメリカは昨年末から国防などの安全保障面でも対中強硬策に転じていたが、さらに貿易不均衡によって貿易戦争に至ろうとさえしている。5月4日にも、米中の通称協議は平行戦に終わり、この後も難航を極める模様だ。

本来なら習近平への母校である清華大学管理学院顧問委員会にいる数十名のアメリカ大財閥のトップたちが間を取って折衷案を模索するはずだが、なにせ顧問委員会メンバーは親中派の巨頭キッシンジャー・アソシエイツの息がかかったメンバーが多い。メンバーもまた圧倒的な親中派だ。昨年末以来ランディ・シュライバーなど、筋金入りの対中強硬派で身辺を固め始めたトランプ政権を説得するのに手を焼いている。

だから中国は勢い、日本に秋波を送るようになったのである。

北朝鮮「1億年経っても日本は訪朝できない」――日中韓首脳会談を警戒し

もっとも、日本と対話の用意があると文在寅大統領に告げていた金正恩は、ここに来て「(日本は)1億年経っても(北朝鮮の)神聖なる地に足を踏み入れることはできない」と言い始めている。5月6日、北朝鮮の労働新聞が伝えた。日本が北朝鮮の非核化に関して、圧力強化を強調しているからだ。

8日に来日し9日に東京で開催される「日(安倍)中(李克強)韓(文在寅)」の首脳会談に対して、内心は北朝鮮に批判的な中国の出方を、金正恩は警戒したものと思う。

日本を「一帯一路」構想に誘い込もうとする中国の魂胆もさることながら、日本はこういった中国の心理と中朝関係をしっかり把握して、日中韓首脳会談に臨むといいのではないだろうか。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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