トランプ流「両面作戦」? イラン核合意破棄でも交渉可能
気が気でない原油市場
原油市場はイラン核合意を巡る情勢を注視している。
「市場は、中東からのニュースをやきもきしながら見ている」。ニューヨークを拠点とするヘッジファンド、アゲイン・キャピタル・マネジメントでパートナーを務めるジョン・キルダフ氏はそう語った。
イラン核合意が破棄された場合、原油供給に対する物理的な影響については、遅れたり緩和されたりする可能性があるが、イラン制裁が再発動されるならば、先物市場は大きく反応するだろう。
米国が核合意から離脱し、イランに制裁を科すことにより、イランの原油輸出が難しくなる事態を想定して、原油価格はすでに1─3ドル(約109─327円)のプレミアムを織り込んでいる。
もし米国が5月12日以降も合意を継続するならば、このプレミアムは失われ、原油価格は下落するだろう。他方、もし米国が合意から離脱してイランの原油輸出が減少するならば、原油価格は1バレルあたり最大5ドル値上がりする可能性がある。
トランプ大統領が制裁の再発動を宣言した場合、欧州の同盟国が引き続き交渉を続けるのか、それとも実際の制裁発効までにイランを含めた当事国がなんらかの妥協を受け入れるのかは不明だ。
5月12日以降の交渉継続について、「技術的には、この(時間的余裕の)窓があることで可能だが、実際にどうやって実現するかを想像するのは難しい」と欧州の外交官は語った。
フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相は今月、相次いてワシントンを公式訪問して、英仏独3カ国と米国の外交官が取り組んでいる核合意の修正案を受け入れるよう、トランプ大統領の説得にあたる。
外交影響
トランプ大統領が、いずれもタカ派のボルトン氏を国家安全保障担当の大統領補佐官に迎え、ポンペオ中央情報局(CIA)長官を次期国務長官に指名したことで、核合意が破棄される確率が高まったとみられている。
合意撤回の場合、イランとライバル国サウジアラビアが主導権を巡ってしのぎを削る中東地域における緊張が一層高まることになる。
また、北朝鮮が米政府の約束は信頼できないと結論づけて、トランプ大統領が同国に対し核・ミサイル計画の抑制を迫ることが困難になる可能性も出てくる。