スイスフランの安全神話崩壊? ロシアの富豪たち、逃避資金引揚げも
ロシアに帰還
しかし、直近のスイスフラン安は、今月初めに導入されたロシア企業や経営者を対象とする米追加制裁の回避手段として、ロシアの富豪たちがスイスから資産を引揚げていることも一因だとみられている。
スイスの銀行は、長年にわたって、ロシアなど世界の富裕層に、本国での課税回避や、単に資金を国外保管する目的で利用されてきた。
2017年にロシアから海外流出した資金の14%はスイス向けであり、米国向けの約3倍だった。INGバンクのアナリストはロシア銀行(中銀)のデータを使ってそう指摘する。
しかしスイスの銀行に対しては、マネーロンダリング防止と制裁対象となっている個人の資金取扱い停止を求める圧力が高まりつつある。
スイス金融市場監査局(FINMA)は、国内銀行に対して外国政府による制裁の執行を義務付けてはいないが、「訴訟リスクやレピュテーションリスクを最小限に抑える責任がある」と述べている。
スイス中銀はスイスフラン相場に関するコメントを拒否した。
今月の制裁措置がスイスフラン安を招いた直接の原因と決めつけることに対しては、為替専門家は懐疑的だ。コメルツ銀行のアナリスト、エスター・ライヒェルト氏は「制裁導入以降、スイスフランに特有の顕著な弱さを示す取引パターンは見受けられない」と語る。
6日からの週に、ルーブルがスイスフランに対して6%下落したことは、ロシアマネーの引揚げによってスイスフランの下落が生じたという考え方と矛盾する。
ロシアマネーがまずロンドンやルクセンブルクなど他の欧州金融センターに移動したかどうかは不明だが、制裁によるプレッシャーは、これらの金融センターにも影響していると考えられる。