ハンガリーで民主主義の解体が始まる──オルバン首相圧勝で
ハンガリーの司法機関や独立した非政府組織への弾圧を懸念する声も多い。
フィデスの議員らは4月9日、政府が国家安全保障上の脅威とみなす組織を閉鎖し、移民支援活動のために外国から資金を受け取っている団体に25%という法外な税金を課すことを認める「ストップ・ソロス」法案を速やかに通過させると誓った。
「フィデスが3期目に議会の過半数を制したことは、重要な司法機関を含め現存するハンガリーの独立機関を意のままに解体できるようになったことを意味する」と、フリーダムハウスの中欧専門家ジェリケ・チャキーは本誌に語る。
「この先4年間の大きな懸念は、フィデスの次の攻撃対象になるのは誰か、ということだ。あらゆる兆候からして、オルバンが反NGO運動に力を入れるのは間違いない」と、チャキーは続けた。
オルバンの反ソロス運動のもう一つの攻撃目標は、ハンガリーの首都ブダペストにキャンパスを構える中央ヨーロッパ大学だ。
ハンガリー議会は2017年4月、ソロスが資金を提供するこの国内最高ランクの大学が、ハンガリーとアメリカの学位を同時に授与することを禁止する法案を可決した。この法律はEU上層部から非難されており、大学も抵抗を続けている。
メルケルは声をあげるか
「国際的な市民団体や海外から資金提供を受けているNGO、独立系メディアは嫌がらせを受けるだろう。ストップ・ソロス法は、選挙後議会が承認する最初の法案のひとつになるだろう。そして対象となる市民団体をできるだけ早く解散させようとする」と、ハンガリー在住のEUと反自由主義の専門家エディット・ズガットは言う。
「さらに、中央ヨーロッパ大学はおそらくウィーンに移転するだろう。ハンガリーでは、独立した市民の活動の場は、これまで以上に制限される」
一部には、ハンガリーで起きている反民主主義的な動きを阻止するために、欧州連合(EU)がより大きな役割を果たすべきだという声もある。たとえばムンクは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相なら、欧州議会最大勢力で中道右派の欧州人民党(EPP)からのフィデス追放を働きかけられると述べた。
「EUやドイツには、できるのにまだやっていないことは山ほどある。ハンガリーの反ユダヤ政権について声を上げ損なったことは、アンゲラ・メルケルの政治的な業績に汚点を残すことになる」と、ムンクは言う。
「EPPからフィデスを放り出すために政治力を使う気があれば、メルケルにはできる」