最新記事

ハンガリー

ハンガリーで民主主義の解体が始まる──オルバン首相圧勝で

2018年4月11日(水)19時20分
クリスティナ・マザ

ハンガリーの司法機関や独立した非政府組織への弾圧を懸念する声も多い。

フィデスの議員らは4月9日、政府が国家安全保障上の脅威とみなす組織を閉鎖し、移民支援活動のために外国から資金を受け取っている団体に25%という法外な税金を課すことを認める「ストップ・ソロス」法案を速やかに通過させると誓った。

「フィデスが3期目に議会の過半数を制したことは、重要な司法機関を含め現存するハンガリーの独立機関を意のままに解体できるようになったことを意味する」と、フリーダムハウスの中欧専門家ジェリケ・チャキーは本誌に語る。

「この先4年間の大きな懸念は、フィデスの次の攻撃対象になるのは誰か、ということだ。あらゆる兆候からして、オルバンが反NGO運動に力を入れるのは間違いない」と、チャキーは続けた。

オルバンの反ソロス運動のもう一つの攻撃目標は、ハンガリーの首都ブダペストにキャンパスを構える中央ヨーロッパ大学だ。

ハンガリー議会は2017年4月、ソロスが資金を提供するこの国内最高ランクの大学が、ハンガリーとアメリカの学位を同時に授与することを禁止する法案を可決した。この法律はEU上層部から非難されており、大学も抵抗を続けている。

メルケルは声をあげるか

「国際的な市民団体や海外から資金提供を受けているNGO、独立系メディアは嫌がらせを受けるだろう。ストップ・ソロス法は、選挙後議会が承認する最初の法案のひとつになるだろう。そして対象となる市民団体をできるだけ早く解散させようとする」と、ハンガリー在住のEUと反自由主義の専門家エディット・ズガットは言う。

「さらに、中央ヨーロッパ大学はおそらくウィーンに移転するだろう。ハンガリーでは、独立した市民の活動の場は、これまで以上に制限される」

一部には、ハンガリーで起きている反民主主義的な動きを阻止するために、欧州連合(EU)がより大きな役割を果たすべきだという声もある。たとえばムンクは、ドイツのアンゲラ・メルケル首相なら、欧州議会最大勢力で中道右派の欧州人民党(EPP)からのフィデス追放を働きかけられると述べた。

「EUやドイツには、できるのにまだやっていないことは山ほどある。ハンガリーの反ユダヤ政権について声を上げ損なったことは、アンゲラ・メルケルの政治的な業績に汚点を残すことになる」と、ムンクは言う。

「EPPからフィデスを放り出すために政治力を使う気があれば、メルケルにはできる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税の影響注視、基調物価の見通し実現なら緩和度合

ワールド

パキスタン、貿易停止など対抗策 観光客襲撃巡るイン

ビジネス

G7は結束維持、米関税巡る緊張も=議長国カナダ財務

ビジネス

関税対策パッケージ決定、中小企業の多角化など支援=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 9
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 10
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中