本業なし非常勤講師の急増で、日本の大学が「崩壊」する
待遇の悪い非常勤講師のポストには不満が高まっている kasto80/iStock.
<日本の大学では90年代以降、大学教員に占める非常勤講師の割合が急増し、待遇の悪さなどから講師の間に不満が高まっている>
京都大のiPS細胞研究所の助教が、論文の捏造と改竄が見つかって懲戒解雇された。有期雇用で「成果を出さなければ契約が更新されない」という焦りがあったのではないか、と言われている。最近の大学では不安定な有期雇用のポストが増え、多くの若手研究者が不安を抱えながら研究に励んでいる。
教壇に立つ教員も同じだ。大学の教員は、専任教員と授業をするためだけに雇われている非常勤講師の2種類に分かれるが、近年では後者の比重が増している。2016年の統計で見ると、専任教員(1)が18万4273人、非常勤講師が16万2040人だ。現在では、大学教員の半数近くが非常勤講師ということになる。
非常勤講師は、作家や研究所勤務などの本業がある「本務あり非常勤講師」(2)と、それがなく薄給の非常勤講師をメインに生計を立てている「本務なし非常勤講師」(3)に分かれる。
大学教員は(1)~(3)の3つに分類される人々で構成されているが、四半世紀ほどの間に内訳がどう変わったかをみると<表1>のようになる。(1)の本業あり非常勤講師には、大学の専任教員が講義をしているケースは含まない。
1989~2016年にかけて大学教員は2倍に増えたが、増加が著しいのは非常勤講師、それも本業なし非常勤講師だ。専業の非常勤講師は1万5689人から9万3145人と6倍近くに膨れ上がっている。今や大学教員の半数が非常勤講師、4分の1が定職なしの非常勤講師で、平成の初期の頃とは状況が大きく変わっている。非正規雇用の増加が問題となっているが、それが最も顕著なのは学問の府の大学かもしれない。
専業非常勤講師の激増は、90年代以降の大学院重点化政策により、行き場のないオーバードクターが増えていることによる(「博士を取っても大学教員になれない『無職博士』の大量生産」2018年1月25日)。今では薄給の非常勤講師の職も奪い合いで、採用時に給与すら聞けない異常事態になっている。