中国が強気のわけ──米中貿易戦
ビジネスフォーラムでのトランプ大統領と習近平国家主席(2017年11月、北京) Damir Sagolj-REUTERS
トランプが仕掛ける対中貿易制裁措置に対して、中国は一歩も引く気はない。むしろ「望むところ」と言わんばかりだ。なぜなのか?習近平政権の戦略と展望を考察する。
強気のチキンゲーム
まるでチキンゲームで、激突を避けるために先にハンドルを切ったプレイヤーがチキン(臆病者)と呼ばれ敗者となるのを恐れるかのように、トランプ大統領と習近平国家主席の高関税制裁ゲームは激しくなるばかりだ(以下、敬称略)。ただ、片やトランプは「ツイッター政治」による独断であるのに対して、習近平は独裁ではあるものの、商務部、外交部、財政部と三大中央行政省庁揃ってのシステマティックな反撃だ。
それも反応が早い。
トランプが3月22日、中国による知的財産権侵害や米企業への技術移転の強要に対抗して、米通商法301条に基づき中国製品に制裁措置を発動する大統領令に署名し、最大で年間600億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を課すと発表すると、中国は翌23日、対抗措置を発表した。アメリカが中国に課した鉄鋼、アルミニウム製品への追加課税に対して、中国はアメリカからのワインや豚肉などに対して高関税を課すとした上で、4月2日には128品目にわたるアメリカからの輸入品リストを発表し、30億ドルに関しては実行し始めた。
するとトランプは4月3日、中国からの500億ドル規模の輸入品1300品目に関するリストを公布。主要対象は情報、通信技術、航空、ロボット、医薬品、機械などである。
それに対して4月4日、中国中央行政省庁の一つである商務部は「アメリカが中国の厳正なる交渉を顧みず、事実無根の根拠により中国に課税措置を断行するのは一国主義と保護主義に基づくもので、中国は絶対に受け入れることはできない」と抗議。ただし、「中国は(貿易)戦争はしたくないが、戦争を恐れてはない」とした。中国の外交部も同日、「(1949年の)中華人民共和国誕生以来、中国はいかなる脅迫にも屈服したことがない」などと表明した。
そして中国は同日のうちに、大豆などの農産品、自動車、化学工業品、飛行機などの、アメリカからの500億ドル規模の輸入品106品目に対して25%の関税を課すと発表している。