最新記事

石油

市場開放進める中南米の産油国 石油メジャーの投資呼び込む競争激化

2018年4月9日(月)11時30分


好条件

外資誘致に向けた中南米諸国の政策措置には、税制優遇やロイヤルティ引き下げ、契約長期化、投資撤退を今までより容易にする各種条件や履行義務の緩和などが含まれる。

ブラジルとコロンビアは、米国のように開発・生産の権益を恒久的に提供する仕組みも導入。エクアドルは、原油価格上昇の恩恵を得られない「フィー・フォー・サービス」方式よりも石油会社にとって魅力がある利益分有契約を結ぶことを提案している。

ウッド・マッケンジーのグローバル開発調査ディレクター、ジュリー・ウィルソン氏は、入札参加を促すために各国は十分に魅力的な条件を提示しなければならないと説明した。

ただ最近のメキシコとブラジルの入札では、合計でおよそ1100億ドル相当もの応募があり、中南米の石油開発に新時代が訪れていることを物語る。

ブラジルは実は20年前から外資の取り込みを画策していたが、開放鉱区が少なすぎたことや、一部プロジェクトの質の低さ、ペトロブラスの権限が圧倒的な点などが障害となり、期待された成果が出なかった。このため現在は入札ルールを緩和し、地元企業や中小の外資に参加資格を与え、サブソルト層開発で一定の基盤を築いている大手に合流することを奨励している。

メキシコの場合は、7月の大統領選に向けて足元で支持率がトップの野党候補がエネルギー市場開放見直しを公約に掲げており、政治リスクが高まった。

それでも何人かの業界首脳は、メキシコが開発から精製、小売りに至るエネルギー市場の全部門を開放する方針は変わらないと考えている。複数の入札には米国や欧州、アジアから幅広い企業の参加が見られ、メキシコ市場の再生が改めて示されたとの声も聞かれる。

各国がお互いの取り組みを模倣し合っている状況も見られる。アルゼンチンは、石油企業が入札を希望する鉱区を具体的に推薦できるというメキシコが過去に導入した制度を採用。メキシコはブラジルにならって、向こう3年の入札日程を定め、石油会社が投資計画を予め策定する時間を増やせるようにしている。

メキシコ国家炭化水素委員会のセペダ委員長は、一部の国は他国と競争するために政策の調整が不可欠だと認識していると指摘。「われわれは近隣諸国の創造性を受け入れられる十分な柔軟性を備えている」と述べた。

(Marianna Parraga記者)

[ヒューストン 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中