市場開放進める中南米の産油国 石油メジャーの投資呼び込む競争激化
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4月2日、中南米諸国ではかつてないほどの規模でエネルギー市場の対外開放が進み、エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェルなどから多額の投資を呼び込むための競争を繰り広げている。写真は、メキシコ国営会社ペメックスの石油精製所。同国グアナフアト州で昨年9月撮影(2018年 ロイター/Edgard Garrido)
中南米産油国の多くは過去何十年もの間、石油資源を政府と国営企業が厳しく管理し、外資への門戸を閉ざしてきた。石油部門の収入で財政資金を豊かにする狙いだったが、ブラジル国営会社ペトロブラスに見られるような汚職や大幅な債務負担、あるいはメキシコ国営会社ペメックスのような資金と専門知識の不足といった問題が続出し、目算が外れてしまった。
そこで今、これらの諸国ではかつてないほどの規模でエネルギー市場の対外開放が進み、エクソンモービルやロイヤル・ダッチ・シェルなどから多額の投資を呼び込むための競争を繰り広げている。
政府当局への取材やこれまでの発表に基づくと、中南米7カ国が今年実施する石油・天然ガス開発権益売却入札は少なくとも15件に上り、鉱区数は陸上と海底合わせて過去最高の1100カ所が提供される見通しだ。3月29日にブラジルが実施した直近の入札では、24億ドル相当の応募があり、68カ所のうち22カ所が実際に落札された。
エネルギーコンサルティング会社ウェリジェンスのバイスプレジデント、パブロ・メディナ氏は「今年は中南米諸国が歴史上最も多くの開発権益売却入札を開催するだろう」と話した。
中南米産油国が競って民間投資を求めている背景には、元手の資金とせっかくの資源を完全に開発できるだけの技術の双方を自分たちは持ち合わせていないと自覚していることが挙げられる。ブラジル、アルゼンチン、エクアドルの場合、中道もしくは中道右派政権の誕生が外資受け入れにつながった面もある。
またこうした動きからは、各国が開発からの取り分が従来より減少する事態を甘受する姿勢になっていることもうかがえる。投資獲得競争を制するには、税制優遇やロイヤルティ引き下げなどが必要になり、政府が得る利益は一段と細りかねない。
中南米では左派政権の下で国営石油会社が資源を牛耳ったままのベネズエラを例外として、他の国は市場改革に乗り出し、国際石油資本(メジャー)や独立系外資に最も豊かな資源の一部について開発を委ねる姿勢を見せている。
もっとも外資勢にとっては、政府が再び資源を国有化したり、改革に向けた政治的意欲を失うリスクにさらされている。原油価格が下落すれば、こうした長期開発がもたらす利益が損なわれてもおかしくない。
仏石油大手トタルの開発・探査・生産担当シニアバイスプレジデント、ミシェル・ウルカール氏は先月ヒューストンで開かれた業界の会合で「われわれは今、中南米に対して賢くお金を使えるように万全を期す必要がある」と語った。