最新記事

南シナ海

南シナ海の領有権争いにロシアが乱入

2018年4月6日(金)16時41分
デービッド・ブレナン

ロシアは中国と手を組むのか?(写真は2016年9月の中ロ海軍の合同演習) REUTERS

<ベトナムとの軍事協力で南シナ海への足がかりを築くロシア──海洋権益をめぐってアメリカと対立する中国の味方につくのか>

ロシアとベトナムが、2020年までの軍事協力の行程表で合意した。これにより、南シナ海をめぐる米中の覇権争いにロシアが乱入する可能性も出てきた。

ロシアの国営タス通信によると、今月モスクワで開催された第7回国際安全保障モスクワ会議に合わせ、4月4日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とベトナムのゴ・スアン・リック国防相が合意した。今年から2020年までの軍事協力の詳細を定めている。

これによってロシアは、ベトナムが行う南シナ海の捜索・救助活動に対して太平洋艦隊から救助艇を派遣することになる。また、南シナ海で潜水艦の航行に問題が生じた場合の捜索・救助活動に関する協力方法についても引き続き協議する。

ベトナムはベトナム戦争のころからロシア(当時の旧ソ連)の軍事支援を受けてきた。しかしロシアは今、南シナ海で大っぴらにそのプレゼンスを高めようとしている。

両国の軍事関係で重要な位置を占めているのは海軍だ。今年2月、ロシアは2隻のゲパルト型警備艦をベトナム海軍に引き渡した。2011年に引き渡した同型艦2隻に続くもので、総額3億5000万ドルの供与契約の一部だ。

ロシア軍艦も「参戦」

両国は合同軍事訓練の実施に合意し、ゴ国防相は事前の準備のためベトナム軍兵士176人をロシアにすると語った。両国は今後3年間、合同軍事演習を行う計画だ。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は今年3月、ロシアとベトナムの軍事協力は「(アジア地域の)持続的な発展と安全保障を確かにするための協力関係の構築」を目指すものだと語った。

ロシアは、ベトナムの西に位置するラオスにも近づいている。ショイグは今年1月にラオスを訪問し、海に面していないラオスとの軍事協力について話し合った。

ロシアが、東南アジアを有力な武器輸出先と見ているのは明らかだ。なかでもベトナムとラオスに関しては、独裁的な政権同士の絆を築こうとしているようにみえる。

ベトナムとの関係強化によってロシアは、領有権争いが激しさを増す南シナ海に直接出ていくことができるようになる。昨年4月には、ロシア太平洋艦隊の軍艦3隻が、ベトナム南部のカムランに寄港し5日間停泊した。軍事協力が強化されれば、こうした軍艦派遣がもっと頻繁に行われることになるだろう。

南シナ海は豊富な漁業資源に恵まれ、航路として重要なだけでなく、海底に豊富な天然資源が埋蔵されているという期待もある。このためベトナム、中国、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、台湾がそれぞれに領有権を主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、ウクライナ支援の見積もり大幅減額─関

ビジネス

米小売売上高、3月1.4%増 自動車関税引き上げ前

ワールド

トランプ大統領「自身も出席」、日本と関税・軍事支援

ワールド

イランのウラン濃縮の権利は交渉の余地なし=外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中