中国市場依存のドイツが味わう「ゆでガエル」の恐怖
独建設器械大手のバウアーのトーマス・バウアーCEO。シュロベンハウゼンで3日撮影(2018年 ロイター/Michael Dalder)
独建設器械大手のバウアー
ドイツ南部バイエルン州を拠点とする、1790年創業のバウワーは、中国合弁パートナーの顔色をうかがう必要がない。上海と天津にある2つの工場は、100%自社で所有しているからだ。
また、同社が製造する特殊建設機械はアジア全体で販売されており、不安定な中国建設市場における景気の波に左右されずにすむ。
しかし、それでも一族経営の7代目にあたるトーマス・バウアー最高経営責任者(CEO)は、中国における自社事業の状況や、これまでドイツ企業と政治家が「確実に儲かる賭け」とみなしてきた中国との経済関係全般について、危惧していると語る。
「ドイツは、1つのバスケットに卵をたくさん入れすぎた。そのバスケットとは中国のことだ」と話す62歳のバウアー氏。バイエルンのアクセントが強く、陽気なバウアー氏は、ミュンヘンから車で約1時間の距離にあるシュロベンハウゼンの本社でロイターの取材に応じた。
同社の懸念は、ドイツで広まりつつある恐れを示している。ここ10年以上、ドイツ経済は、世界金融危機やユーロ圏債務問題、大量の難民流入などにも耐え、欧州成長をけん引してきた。
その強さの裏側には、2つのエンジンがあった。ドイツの革新的企業が、成長経済が必要とするハイエンドな製品を数多く生産してきた。また、ドイツは、オープンでルールに沿った世界貿易システムから利益を上げることに長けており、そこから競争力を得ていた。
中国は、この両面で重要だった。
この10年、外国企業に対して徐々に門戸を開く中で、中国はドイツ製の自動車や機械を驚くべきペースで買い上げている。ドイツの自動車メーカーは昨年だけで、米国販売の3倍以上に相当する500万台近くを中国で売り上げた。
しかし、依然として好況が続いているものの、「ドイツ株式会社」の中国市場に対する見方には、劇的な変化が生じつつある。
習近平政権の下で、中国の開放政策が逆回転を始めているだけでなく、中国企業も、ドイツ側の予想を大きく上回るスピードでバリューチェーンの上流へ移動してしまったのだ。
ドイツが抱える中国のコナンドラム(謎)は、欧州が直面する、より広範な試練の一角だ。ここ数年、内向きな危機対応に追われていた欧州は、今後待ち受ける地政学的、経済的リスクに対応するには、政治的に分断されており、まだ準備不足の状態だ。
欧州大陸はいまや、自己主張を強める中国と「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ米大統領の間で、板挟みになるリスクに直面している。