トランプ、武器輸出増狙いセールス活動 「バイ・アメリカン」の内幕
最高のセールスマン
多くの米大統領が自国の防衛産業を売り込んできたが、トランプ氏ほど臆面もなくそれを行った人は誰も知られていない。元不動産王である同氏は、米国製品を売り込んでいるときが一番生き生きしているように見えることがある。
ホワイトハウスの声明によると、トランプ大統領は定期的に各国首脳と会談や電話によって特定の武器売却について協議しているという。昨年11月の日本訪問では、米国製兵器をもっと購入するよう公式の場で安倍晋三首相に直接要請した。
より最近では、先月大統領執務室で行われたサウジアラビアのムハンマド皇太子との会談で、トランプ大統領は、サウジアラビアに売却された米国製ジェット機や艦船、ヘリコプターなど兵器の写真パネルを掲げ、「われわれは世界最高の軍用品を製造している」と記者団に自慢して見せた。その傍らでムハンマド皇太子は笑みを浮かべて座っていた。
ニクソン、クリントン、ジョージ・W・ブッシュら歴代大統領も自国防衛産業の基盤を強化する必要性を強調していたが、もっと遠回しなやり方だったと、超党派のシンクタンク、国際政策センターで軍備・安全保障プロジェクトのディレクターを務めるウィリアム・ハータング氏は指摘する。
「トランプ氏ほどあからさまな大統領はいない。彼ほど声高に訴えた大統領はいなかった」
オバマ前大統領は、安全保障の必要性にかなうと考える兵器システムについて、同盟諸国の首脳と話すことはあったが、兵器を売る仕事からは距離を置くことを好んだと側近は語る。
オバマ政権は2014年、米武器メーカーがかつてないほど海外で売却することを可能とする規制緩和を実施したが、トランプ政権の通常兵器移転政策(CAT)を全面的に見直すという計画は、オバマ政権の規制緩和をはるかに超えている。オバマ氏は一部の武器売却において批判を受けたことはあるものの、規制には明確な一線を設け、人権に関する厳格な基準を満たすことを義務付けていた。
トランプ大統領はすでに、オバマ氏が阻止したいくつかの契約にゴーサインを出している。その中には、70億ドル規模のサウジアラビアへの精密兵器売却が含まれている。これら武器売却を巡っては、イエメン内戦において、サウジが主導する軍事作戦により市民の犠牲者が出た一因であるとして人権団体が懸念を示している。