最新記事

旧ソ連

バルト3国をロシアから守ると保障しなかったトランプ

2018年4月5日(木)18時00分
クリスティナ・マザ

訪米したバルト3国首脳とトランプ大統領(トランプの隣りからリトアニア大統領、エストニア大統領、ラトビア大統領) Kevin Lamarque-REUTERS

<ロシアの隣りで常に侵略の恐怖と隣り合わせのバルト3国首脳に、トランプはアメリカの武器購入とNATOへの資金拠出の実績を称賛するだけで、ロシアを脅威と認めなかった>

ロシアが4月4日、バルト海沿岸で始めた軍事演習に、隣の小国ラトビアが懸念を強めている。演習のせいで民間航空機の一部欠航を余儀なくされた同国は、ロシアによる脅しだ、と反発している。

ロシア国防省はその2日前、バルト海沿岸の飛び地カリーニングラードで定例の軍事演習を行う、と警告していた。だがラトビアによれば、ロシアはラトビア領海のすぐ外の排他的経済水域(EEZ)でミサイルの実弾演習を行っているという。ラトビアのマリス・クチンスキ首相は「軍事力の誇示だ」と非難した。「こんなに近くでやるなんて信じられない」

前日の4月3日、ラトビア、エストニア、リトアニアのバルト3国首脳は訪米してホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領と会談。ラトビアのライモンツ・ベーヨニス大統領は、ロシアが軍事進攻してきた場合、アメリカがバルト3国の領土を守ってくれるよう保証を求めた。

バルト3国はいずれも北大西洋条約機構(NATO)に加盟しているため、ロシアが軍事侵攻すれば、アメリカを盟主とするNATO加盟国は防衛義務を負う。

3国首脳の訪米に合わせ、米政府は大口径弾薬の調達用に約1億ドルを、軍事訓練などに7000万ドルをそれぞれ供与する、と発表した。

ロシアと仲良くした方がいい

トランプは首脳会談のなかで、今後さらに多くの武器を売却すると約束。バルト3国はNATOの予算に高く貢献している、と持ち上げた。3カ国はロシアと国境を接することから、常にロシアの侵攻に怯えており、他のヨーロッパ諸国と比べても国防費の割合が突出して高いのだ。

「あなた方がアメリカから大量の武器を購入していることに感謝する。ミサイルであれ、戦闘機であれ、アメリカ製の武器は世界一だ」と、トランプはバルト3国首脳に言った。「アメリカは(バルト3国の)安全保障のための共同訓練を増やしていく。あなた方が特に素晴らしいのは、(GDPの2%を国防費にあてるという)NATO加盟国の目標をすでに達成していることだ。他の加盟国のお手本だ」

ただ、肝心のロシアの脅威は認めなかった。バルト3国はロシアと仲良くした方がいい、とさえ言った。ロシアには、アメリカには守る気がないと見えるだろう。

(翻訳:河原里香)

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売

ビジネス

NY外為市場=ドル、低調な米指標で上げ縮小 円は上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中