アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる
シリアの首都ダマスカス。アサド大統領のポスターの前で警備に当たるロシア軍とシリア軍兵士。米軍が大規模な攻撃を仕掛ければ、ロシアとぶつかる危険がある Omar Sanadiki-REUTERS
<トランプ政権が化学兵器使用への制裁でシリアを再び攻撃するなら、化学兵器使用を止められなった1年前のミサイル攻撃より大規模でなければならない>
もしドナルド・トランプ米大統領が、シリアの首都ダマスカス近郊で4月7日に起きたシリア政府によるとみられる化学兵器使用を受けて攻撃に踏み切るなら、1年前のような限定的な攻撃でなく、より大規模な軍事作戦になるのはほぼ確実だ。
「シリアのバシャル・アサド大統領が、2度と化学兵器を使う気にならないほど懲らしめるには、前回より攻撃対象を広げる必要がある」と、米シンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のニコラス・ヘラス研究員は言う。「シリア軍を事実上無力化するぐらいの規模だ」
1年前、トランプ政権はアサド政権がシリア北西部イドリブ県ハーンシャイフーンで猛毒の神経剤サリンを使用したことへの対抗措置として、米軍の巡航ミサイル「トマホーク」でシリアの空軍基地を攻撃。メディアもそれを大々的に報じた。だが1回限りの攻撃では、アサド政権による化学兵器の使用を止められなかった。
それでも化学兵器を使い続けたアサド
米軍は、当時シリア軍が化学兵器による攻撃の拠点にしていた空軍基地に向けて、地中海の洋上からトマホーク59発を発射したが、シリア政府が保有する化学兵器や軍事能力に深刻な打撃を与えることはできなかった。実際、米軍の攻撃を受けた数時間後には、同じ空軍基地からシリア軍の戦闘機が飛んでいた。
アサド政権はそれ以降も、全域で反政府勢力との戦いに化学兵器の使用を続けた。ハーンシャイフーンでのサリン攻撃の後も最低2回、塩素ガスを使用した。だが国際社会はほとんど反応を見せず、アメリカも報復しなかった。
そうした経緯に加えて、超タカ派と言われるジョン・ボルトン元米国連大使が国家安全保障担当の大統領補佐官に就任したことで、トランプ政権が大規模な軍事行動に乗り出す可能性はますます高まっている。
「失うものが大きいからと言って攻撃を前回より手控えるようなことをすれば、トランプ政権の権威が失墜しかねない」、と米議会関係筋は言う。
ヘラスによれば、米軍はシリアの西部と東部の両方で、シリア政府軍の拠点を標的にした攻撃に踏み切る可能性がある。