習近平国家主席再選とその狙い──全人代第四報
今もなお東京裁判記念館が建立されようとしているし、日中戦争時代の中共軍戦士を侮辱してはならないとする英雄烈士保護法も制定しようとしている。それは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いた「中国共産党が強大化した真相」が明るみに出るのを恐れているからだ。これまで人民を騙してきた嘘がばれるのを怖がっている。
王岐山を国家副主席に
2月26日のコラム「王岐山、次期国家副主席の可能性は?」で予測した通り、王岐山は17日の全人代で国家副主席に選出された。
昨年末から顕著化したトランプ政権の対中強硬策に対抗できる人物として、王岐山の豪胆ぶりを買ったからだと見るべきだろう。王毅外相や楊潔チ国務委員(外交担当)といった従来の官僚的存在では、トランプに太刀打ちできない状況にあるからだ。
かつて金融や経済貿易領域でアメリカと渡り合ったこともある王岐山にその任務を与えるだけでなく、「台湾旅行法」の制定により台米政府高官が互いに行き来できるようにしたトランプ政権と対等に交渉できる大物が欲しいのが、習近平の本音だろう。
もし、これら一連の動きまで権力闘争の結果と分析したりなどしていたら、中国の正体は見えなくなり、日本の国益を損ねることにつながるので、現実を客観的に正視するように期待する。
追記:もちろん習近平は自身の手で「一帯一路」巨大経済圏構想を完遂させて「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げたいという野望は持っているだろう。しかし独裁色が濃くなれば西側諸国が中国に対して抱く危機感もまた強まり、逆に一党支配体制の弱体化を招くであろうことは明らかだ。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。