銃規制運動を率いる高校生は課外授業が育てた
生存者の高校生の積極的な活動で、銃規制をめぐる運動は過去にないほど広がっている Colin Hackley-REUTERS
<生き残った学生が銃規制の議論を動かせたのは、全米で失われゆく「課外授業」の成果だった>
銃乱射事件から2週間たった2月28日。現場となったフロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校では、ようやく授業が再開された。
だが同日、共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は生徒たちを激励するどころか、「傲慢とうぬぼれ」に「感染した」と非難。州議会は教師を含む学校職員に校内で銃を隠し持つ許可を与える案を検討し、共和党連邦議員らは銃規制を望む声に背を向ける。一見、アメリカは今回の事件をもってしても何一つ変わらないようだ。
だが、そうとばかりもいえない。事件を生き延びた生徒たちが、ソーシャルメディアを駆使し、銃規制に関する議論を変革しつつある。
さあ今こそ、アメリカの教育に関する議論を変革する時だ。いや、教育現場における銃の話ではない。ダグラス高校の生徒たちが身をもって示した、教育システムについての話だ。
落ち着き払い、雄弁で博識で、あり得ないほど大人びたダグラス高校の生徒たちが事件後の運動で力を発揮したのは、彼らが特殊な個性や才能を持っていたからだろうと、人々は考えている。事実、彼らの言葉が驚くほどパワフルなので、クライシスアクター(犠牲者の役を演じる役者)だの、政治家に動員されただのと、ばかばかしい陰謀論が広がったほどだ。
だが今回の件から読み取れる教訓がある。生徒たちの雄弁さは、同校で受けた「課外教育」の成果を証明するものでもあったのだ。
アメリカの公立校でここ数十年、教養科目と体育が次第に削られるなか、ダグラス高校は50年代スタイルの公教育を受けられる数少ない学校だった。比較的裕福な地域にあることも影響し、同校は予算の関係から全米で削減された課外教育の恩恵にあずかれた。
公民権運動への積極性を生む
ダグラスの生徒たちが事件後、運動の担い手として活躍したのは、同校の「即興スピーチ力を育てる討論プログラム」によるところが大きい。この地区の全中学・高校には討論と演説を学ぶ課程があり、偶然にもダグラスの生徒の一部は今年、銃規制に関する討論に向けて準備を進めていた。
運動を主導した生徒たちの大部分は、演劇課程も受けていた。また、学校新聞を運営し、放送ジャーナリズムを学ぶ若きジャーナリストたちでもあった。その1人デービッド・ホッグは、銃撃中に身を隠しながら級友たちをインタビューし、映像を公開。クリスティー・マは「生々しい感情を伝えるため、できる限りの写真を集めた」と言う。