クロヒョウ食べて逮捕のタイ建設会社社長が、ミャンマー原生林に道路建設
その後一時同社長の消息が途絶え、「海外逃亡説」が流れたが、ITD社は「国内の建設現場を視察していただけだ」と海外逃亡を否定している。
ネットにアップされた逮捕時の画像には、テントの前で警察官に囲まれたプレムチャイ社長、動物の皮、クロヒョウの遺体、スコープ付きのライフル銃などが写っている。
クロヒョウの漫画、イラストで批判
タイ国内では、密猟しながら保釈金で釈放され、容疑者の身分なのに高速道路建設計画を発表するなど、富裕層に甘い治安、司法当局を皮肉って街中に「クロヒョウ」の落書きやインターネットにイラストや漫画が書き込まれるケースが増えている。
タイ市内では落書きを当局が発見しては即座に消しているが、そのそばから新たに落書きされるなど、国民のプレムチャイ社長と警察に対する不満がクロヒョウの形になって爆発しているといえる。
ミャンマー側も高速道路建設計画自体はダウェイ経済特区の発展に欠かせないとの立場から反対はしていないものの、プレムチャイ社長の関係する建設会社には難色を示している。豪ABC放送は「タイの法律を守れない人物が外国であるミャンマーの法律を遵守するとは思えない。環境破壊や野生動物密猟の実績のあるITD社を今後はブラックリストに載せるべきだ」というミャンマーの権利擁護団体の代表の声を報じている。
今後の焦点は、逮捕容疑の裁判が公正に開かれて法の裁きをプレムチャイ社長が受けるかどうか、高速道路計画が当初の予定通りにITD社が請け負って行われるのかどうかの2点に絞られているが、タイマスコミの間では、裁判はうやむやになり、高速道路は予定通り、と悲観的な見方が有力だ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など