最新記事

韓国事情

韓国、スイスと通貨スワップ締結 日本、アメリカとはめど立たず

2018年3月2日(金)16時00分
佐々木和義

基軸通貨との通貨スワップ締結に取り組む韓国 李柱烈韓国銀行総裁 Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国銀行は、スイス国立銀行と、金融危機時などにウォンとスイスフランを融通し合う通貨スワップの協定を結んだ>

韓国銀行は2018年2月20日にスイス国立銀行と通貨スワップ協定を締結した。金融危機の際などにウォンとスイスフランを融通し合う協定で、上限は100億スイスフラン、期間は3年である。

李柱烈韓国銀行総裁は、スイス国立銀行との契約署名式で訪れたスイスのチューリッヒで、基軸通貨国のなかでもとりわけ日本との通貨スワップに関心があると話している。

カナダにつづき二カ国目

6つの基軸通貨国である米国、ユーロ圏、日本、英国、カナダ、スイスは、期限と上限を定めない通貨スワップのネットワークを形成している。

韓国は2017年11月にカナダと通貨スワップを締結しており、スイスとの協定は先進国間通貨スワップネットワークの二カ国目となる。さらに英国とも交渉を進めているが、ブレクジット(英国の欧州連合脱退)のすべての過程が終了して落ち着くまで難しいという見方が強い。

日韓は、2001年に二国間の通貨スワップの協定を締結

日本と韓国は2001年、チェンマイ・イニシアティブにもとづいて、通貨スワップの協定を締結した。1997年から98年のアジア通貨危機を踏まえたASEAN+3財務相会議が2000年5月にタイのチェンマイで開催され、二国間の通貨スワップのネットワーク構築に合意したもので、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)と呼ばれ、2010年には多国間のマルチ化契約(CMIM)が発効している。

また日本銀行と韓国銀行は、2005年5月27日、チェンマイ・イニシアティブとは別に限度額を30億ドル相当の自国通貨とする通貨スワップを締結した。2011年にはCMIのスワップと合わせて総額700億ドル相当まで拡大したが、2012年の李明博大統領の竹島上陸などで日韓関係が悪化し、日本銀行と韓国銀行の通貨スワップの協定は2013年7月3日、チェンマイ・イニシアティブの協定も2015年2月23日の期限到来とともに終了した。

韓国は、スイスとカナダの他に、中国と560億ドル相当、インドネシアと100億ドル相当、オーストラリアと77億ドル相当、マレーシアと47億ドル相当の通貨スワップをそれぞれ締結しているが、いずれも相手国通貨の協定である。最近締結したカナダドルとスイスフランを除くと、基軸通貨はチェンマイ・イニシアチブ(CMIM)のマルチ化契約による384億米ドルのみとなっている。

米国は交渉に応じていない

通貨スワップは通貨危機等に際に、中央銀行が外貨を確保して市中に流通させ、外貨不足で決済が不能になる事態を防ぐ制度だが、一方、為替介入による通貨の安定を目的に使用することがある。

2007年、米国のサブプライムローン問題を発端とする世界同時不況時、韓国は甚大な通貨危機に見舞われた。韓国ウォンは信用を失い、1ドル1500ウォン台まで下落した。韓国は米国と締結した通貨スワップを利用した為替介入で短期的に持ち直し、1ドル1259ウォンまで回復したが、2009年にはふたたび1ドル1500ウォン台になった。通貨スワップの限度額300億ドルのうち、200億ドルを使っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中