南北融和か鼻血作戦か......北朝鮮核危機の行方は
1月半ば、カナダ・バンクーバーで開かれた北朝鮮問題に関する20カ国外相会合で、マティスは強調した。「現段階の努力は外交分野のみにある。私たちが取り組んでいるのはそこだ」
金正恩が収めた「勝利」
それこそ各国外相が聞きたかった言葉だと、会合に出席した日本のある外交官は言う。「トランプ政権には一貫して、戦争を現実的な可能性と捉える強い意識がある。一部にとってはそこが恐ろしい」
米政権が1月末に駐韓米大使の人事案を撤回した一件は、アメリカの同盟国の間に渦巻く不安を強めた。大使に内定していたビクター・チャはブッシュ元政権でNSCアジア部長を務めた人物。北朝鮮専門家であり、鼻血作戦を支持していない(チャが外されたのは政策観の相違が理由と指摘する声もあったが、実際はそれほど単純な話ではなく、チャの親族の1人が韓国に事業権益を持つため利益相反の疑いを招きかねないと懸念されたことが真相らしいが)。
身内にも否定的な声があるにもかかわらず、ホワイトハウスは今も鼻血作戦を選択肢とみている。反対派が最も警戒するのは「限定攻撃に対する金正恩の反応は分かっている」という思い込みだと、CIAの元北朝鮮担当分析官で、戦略国際問題研究所のシニアフェローであるスー・ミ・テリーは言う。
北朝鮮に対する「封じ込め・抑止」戦略の強化を支持する米政権内の一派は現在、いくつかの選択肢を取りまとめている。より包括的な制裁、北朝鮮からの不正輸出を阻止するための船舶検査および日韓米のミサイル防衛システムの強化などだ。
だが、それも時機を逸したかもしれない。平昌五輪の融和ムードの後では、韓国は北朝鮮に対しより強硬な姿勢で臨みたがらないのではないかと、アメリカは不安視している。
文との会談の際に金与正は兄からの親書を手渡し、訪朝と南北首脳会談の開催を呼び掛けた。北朝鮮に融和的とされる革新系の大統領である文は、すぐにも誘いに応じるかもしれない。米政権はその点を懸念したが、文は「条件が整えば」と当たり障りのない返答をした。
しかし、これで不安が解消したわけではない。韓国内では今後、平壌での南北首脳会談を早期に実現せよ、との政治的圧力が高まると考えられる。
同盟国を安心させるべく、アメリカは南北首脳会談を支持することになるかもしれない。さらには米政府自ら、北朝鮮との直接会談に臨む可能性もある。金正恩の「オリンピック作戦」は大成功を収めた、のか?
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