最新記事

移民

米入管で不法入国者を待つ「冷凍庫」並みの監房

2018年3月1日(木)15時30分
シャンタル・ダシルバ

精神的外傷を残す

HRWが調査した女性と子供の大半は、祖国で暴力など迫害を受けて逃れてきたと語った。

「収容施設の状況は不必要に過酷なばかりか、とりわけ祖国で迫害されてきた人たちにとっては、明らかに有害だ」と、ボチャネクは言う。「アメリカは子供たちや彼らの家族にトラウマを与えるような慣行を今すぐやめるべきだ」

HRWは被収容者を「虐待的な条件下」に置くことが精神の健康に与える影響についても警告している。

災害援助と人権擁護のNPOユニテリアン・ユニバーサル奉仕委員会の15年の報告書によると、アメリカの入管当局に逮捕された人々にとって、「最も耐え難く、精神的外傷を与える」期間は、収容施設で過ごす期間だという。

HRWによれば、収容施設は不衛生でもあり、被収容者にはハンドソープも与えられない。トイレや食事、乳幼児への授乳やおむつ替えの前後にも手を洗えないということだ。

法令違反はないとCBP

ある女性は5歳の息子とリオグランデ川の浅瀬を歩いて渡り、ずぶ濡れになって入国した後、寒い監房に入れられて、「がたがた震えながら、コンクリートの床に座っていた」と、HRWに話した。

「せめて息子は床の上で眠らずに済むよう、膝の上に抱えて、私は座ったまま寝た」

CBPの職員は本誌の取材に対し、「HRWの報告書のことは知っている。報告書で指摘された問題についてはHRWと話し合った」と述べた。

CBPは「短期収容施設」を運営し、不法入国者の収容を「連邦法の貿易円滑化・貿易履行強制法に基づき、通常は72時間以内」にとどめているという。

CBPはまた「すべての被収容者の尊厳を尊重しており、すべての短期収容施設が関連法規に定められた基準に適うよう管理を徹底している」と強調。内部の運営査察部門が施設の状況を定期的にチェックするなど、複数の「法令遵守メカニズム」が機能しており、違反は一切ないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中