メルケル4期目、大連立内の利害調整に潜む難題
連立政権内の相反する要求をメルケルはうまくさばききれるか? REUTERS/Hannibal Hanschke
ドイツ社会民主党(SPD)は4日、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立合意を全党員の投票で承認したと発表し、メルケル氏は首相として4期目に臨む。しかしメルケル氏が連立政権内の相反する要求をうまくさばききれないようなら、求心力を失う恐れがある。
昨年9月の総選挙では、新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が台頭し、CDU・CSUとSPDはいずれも党勢が後退。このためCDU・CSU内の保守派は、メルケル氏が2015年に100万人の難民受け入れを決断したことがAfDの躍進を許したと考え、AfDに流れた保守票奪回のため政策を右寄りに修正したい考えだ。反対にSPDは、福祉や教育の予算拡充して国民の不安をなだめる路線を模索している。
コンサルティング会社テネオ・インテリジェンスのマネジングディレクター、カルステン・ニッケル氏は「メルケル氏は、CDU・CSUの反発を招き過ぎないようにしながらも、党勢が弱まって方向性が定まらなくなっているSPDをつなぎとめる必要がある」と述べ、今後首相が直面するかじ取りの難しさを説明した。
メルケル氏は、過去3期のうち2005─09年と2013年から現在までの2期でSPDと大連立を組んで政権を運営してきた。ただCDU・CSUとSPDがともに9月の選挙で1949年の共和国誕生以降最悪の不振を記録したことから、連立政権の基盤は過去2回よりもろくなるのは間違いない。
シンクタンクのブリューゲルのギュントラム・ウォルフ所長は「(SPDの党員投票で)かなりしっかりした多数の賛成が得られたとはいえ、長期的あるいは恒久的な政権の枠組みが整ったわけではない。SPDは非常に脆弱で、CDUもまた弱体だ」と指摘した。
離脱の選択肢
大連立協定には、2年後に新政権の成果を検証するという項目が含まれている。つまりこれはSPDは希望する場合、連立を離脱できるオプションを得たとの見方が多い。
ベルリン自由大学のニルス・ディーデリッヒ教授は「SPDの支持率が落ち込み続けるなら、いつか『政権を出ていかなければななない』と言う局面がやってくる」と語った。
そこでメルケル氏は、SPDを政権内にとどめておくためには、大連立合意に基づいてSPDが重視するヘルスケア改革やデジタル時代の課題に対応するための教育投資といった政策項目を達成しなければならない。
SPDは欧州統合の深化を通じて経済的な安定や社会の一体化を目指す意向も持っており、大連立の反対運動を展開した青年部代表のケビン・キューネルト氏は、CDU・CSUと合意したフランスと協力するユーロ圏改革の実行に遅れが生じれば、すかさず非難しようと待ち構えている。党員投票結果発表後にはツイッターに「大連立への批判は消えていない」と投稿した。