平昌五輪、前半戦の勝者は韓国「文在寅」大統領だ
John Sibley-REUTERS
<平昌五輪に北朝鮮を参加させた文政権は、半島外交の主導権を取り戻した>
平昌冬季五輪も、いよいよ山場。前半戦の最大の勝者は誰か。筆者の見るところ、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領だ。
世間には、妹の金与正(キム・ヨジョン)を特使として送り込み、文大統領と会談させた金正恩(キム・ジョンウン)の「ほほ笑み攻勢」の勝利という見方もあるが、少なくとも南北関係の今後に関する限り、現時点で主導権を握っているのは韓国政府だ。そもそも平昌五輪をめぐる一連の外交攻勢を仕掛けたのも文大統領だった。
まず、北朝鮮の五輪参加が実現したのは韓国政府の熱心な働き掛けがあったからだ。文大統領は何カ月も前から北朝鮮に、選手団や応援団の派遣を呼び掛けてきた。韓国政府と平昌五輪組織委員会は水面下で、あらゆるルートを通じて北朝鮮を説得してきた。そうしてついに、ミサイル発射と核実験の繰り返しで孤立の底にあった北朝鮮を引きずり出すことに成功した。
数カ月にわたる努力は、文政権の外交的勝利で報われた。開会式の際に南北朝鮮の選手団が朝鮮「統一旗」の下で行進した光景は感動的だった。オリンピック史上初ではないが、韓国の領土で実現したのは初めてのことだ。
韓国内で批判の多かった女子アイスホッケーの南北合同チームも成功と言える。もともとメダルを期待できる競技ではなかったし、試合結果は惨敗続きだが、合同チームは南北の絆を見せつける強力なシンボルとなった。
ただし文政権の外交努力が最も報われたのは、競技会場ではなく開会式の貴賓席だった。北の指導者の妹が訪韓しただけでも大成功なのに、文大統領は金与正と大観衆の前で握手を交わした。これは強力なメッセージだ。
その後の会談や、北朝鮮が文に訪朝を要請したことも重要だ。しかも金正恩は正式に、今回の五輪参加に謝意を表している。わずか数日で、文は南北関係の雪解けと首脳会談開催の可能性をたぐり寄せた。数週間前には予想もできなかった成果である。
振り回されてきた韓国国民
もちろん、アメリカと日本の保守派にとっては不愉快な1週間だった。平昌に行くのは北朝鮮のプロパガンダに対抗するためだと語っていたマイク・ペンス米副大統領は、開会式での南北選手合同行進の際に起立せず、公式の記念撮影も拒否。歓迎レセプションはわずか5分で退席した。「対話の窓口は常に開かれている」という発言が空疎に聞こえる。
<ニューズウィーク日本版2月20日発売号(2018年2月27日号)は「韓国人の本音」特集。平昌五輪を舞台に北朝鮮が「融和外交」攻勢を仕掛けているが、南北融和と統一を当の韓国人はどう考えているのか。この記事は特集より>