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北朝鮮「スリーパーセル」論争に隠された虚しい現実

2018年2月19日(月)15時02分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

ハッキリ言って、現在の日本における対北防諜(カウンター・インテリジェンス)の現場というのは、なんだか気の抜けたような雰囲気になっているのだ。中国などの技術力の向上を受けて、北朝鮮は昔ほどには、戦略物資の調達を日本に依存しなくなっていると思われる。

また拉致問題に加え、北朝鮮国内の人権侵害が国際的イシューとなったことで、日朝国交正常化で巨大な経済支援を受けるという北朝鮮の「野望」も、事実上、ついえてしまった。いまの北朝鮮には、外交官であれ工作員であれ、優秀な人材を日本に振り向けようという動機が、基本的にはないのだ。

そのような現実が、主要メディアで語られることはほとんど、いや、まったくないと言っていいだろう。それこそが、「スリーパーセル」を巡る議論が熱を帯びる素地となっているのだろうが、そのような様を見るにつけ、妙にむなしい気分になってしまうのは、筆者だけだろうか。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
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