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欧州イタリア総選挙、甘い公約に潜む「財政債務の時限爆弾」
2月15日、「すべての約束は借金です。よく考えて」──。ローマやミラノの主要駅を訪れると、巨大な「債務時計」の下にこうしたメッセージが掲げられている。写真はローマのテルミニ駅(2018年 ロイター/Alessandro Bianchi)
「すべての約束は借金です。よく考えて」──。ローマやミラノの主要駅を訪れると、巨大な「債務時計」の下にこうしたメッセージが掲げられている。
シンクタンクが設置したこのデジタル時計は、現在2兆3000億ユーロに膨らんだイタリアの債務をリアルタイムで表示。3月4日の総選挙に向け、減税や歳出増加といった甘い約束をする政治家にだまされないよう有権者に呼び掛けている。
イタリアの債務比率は国内総生産(GDP)比132%と、ユーロ圏でギリシャに次いで2番目に高い。2011年のような債務危機が再来すれば、もろい立場にある。
アナリストによると、世論調査でリードしている中道右派連合の公約が最も浪費的で、大幅な減税と公的年金および社会福祉費引き上げの組み合わせとなっている。
公約の柱は、現在23%から43%までの段階方式となっている個人・法人の所得税率を、一律23%未満に統一する措置。これは500億─800億ユーロ(623億5000万─997億5000万ドル)の税収減につながる見通しだ。
新興政治組織「五つ星運動」と与党民主党の公約も、減税と支出拡大を通じて欧州連合(EU)と合意済みの財政赤字のGDP比率を引き上げるもので、中道右派と大差ない。
エコノミストが理解に苦しむのは、これらの政党が同時に債務の大幅削減も約束していることだ。
中道右派連合の主流で、シルビオ・ベルルスコーニ氏率いる政党フォルツァ・イタリアは5年間で債務比率を30%引き下げて100%にできると主張。民主党は10年間で30%の縮小、五つ星運動は10年間で40%の縮小を、それぞれ約束している。
ボッコーニ大の経済学教授、ロベルト・ペロッティ氏は「国民をたぶらかそうとしているだけだ。意味のない任意の数字を並べているだけ」と断じる。
財政緊縮路線は失敗した、これからは成長が鍵を握る、という主張で各政党は一致している。成長を刺激すれば雇用も税収もGDP伸び率も高まり、ひいては債務のGDP比率も下がるという理屈だ。
<非常に楽観的>
国際通貨基金(IMF)のカルロ・コッタレッリ財務局長は、すべての政党の計画が「非常に楽観的な経済シナリオに基づいており、発表された措置と債務削減目標の整合性が取れない」と批判した。
ペロッティ氏の試算では、中道右派の経済政策には最大1600億ユーロの財源が必要で、債務比率は少なくとも年7%拡大する。
ペロッティ氏は、成長率が上がれば税収も増えるという主張も一蹴。税率一元化の財源を賄うだけでも約10%の成長が必要になるとし、「初年度にはGDPが高まりそうだが、そこでまた債務危機が訪れ、増税を余儀なくされる。2011年の二の舞だが、もっと悲惨になるだろう」と語った。
フォルツァ・イタリアは、さまざまな税控除の廃止によって税率一元化の財源を賄うと表明している。しかし過去には、財務省が小幅な税控除廃止を提案しただけで拒否された経緯がある。影響を受ける層から支持を失うことを、政治家が恐れたからだ。
今のところ、債券市場はイタリア総選挙の動向をあまり心配していないように見える。実際に公約を遂行することはないと予想しているからかもしれない。
しかしペロッティ氏は「全部は実行しないとしても、一部は行わざるを得ない。税率一元化と社会保障費の増加だけでも、債務を大幅に押し上げるのには十分だ」とくぎを刺した。
(Gavin Jones記者)