仮想通貨の効果的な対策を見出せない韓国政府
韓国では仮想通貨の取引実名制が導入された(写真は1月11日) Kim Hong-Ji-REUTERS
韓国で2018年1月30日から仮想通貨の入出金を取引所と同一銀行の本人確認を行なった口座に制限する取引実名制が導入された。
政府は投機が過熱する仮想通貨対策を検討してきた。取引所を閉鎖する案もあったが、投資家の反発が強く、仮想通貨取引の透明性を高める制度で新規の投機を抑制するにとどめた。青少年や非居住外国人を仮想通貨取引市場から排除し、マネーロンダリングを防止する効果が期待されている。
仮想通貨で大きな収益を得られるという噂がインターネットやSNSで広まって、投資が過熱し、韓国の市場価格が外国相場を上回るキムチプレミアム現象で、ビットコイン価格は韓国時間2017年11月29日には海外相場より17%高い1274万ウォンを記録した。世界相場は国際標準時間28日に1万ドルを超えたが、韓国の買い攻勢が海外相場の上昇に影響を与えたと専門家は分析する。
仮想通貨の取引高は株式市場のコスダックを超える規模となり、相場の乱高下に加えて、投資詐欺や取引高の増加に追いつかない取引所の脆弱なセキュリティを狙ったハッキングが多発したが、中央機関等による保証や投資家を保護する制度はなく、民間保険会社のサイバー保険も仮想通貨を「電子的データ」とみなし、ハッキング被害等は補償しないこともあり、対策が急務となっていた。
二転三転する政府の対応
韓国金融委員会は2017年12月28日、取引所の閉鎖に向けた特別法の制定を検討すると発表、法務部の朴相基(パク・サンギ)長官も2018年初頭の新年記者懇談会で仮想通過の取引を禁止する法案を準備中と述べ、価格は下落する。
閉鎖に反対する投資家が青瓦台(大統領府)の国民請願掲示板に金融委員会の崔鍾球(チェ・ジョング)委員長の解任を要求する文章を投稿し、1万人を超える投資家が同意する事態に発展した。
青瓦台の尹永燦(ユン・ヨンチャン)国民疎通首席秘書官は、仮想通貨の取引所閉鎖は法務部が準備してきた方策の一つで、確定した事案ではないと説明する。
翻弄されたのは投資家と都市銀行
二転三転する政府の対応に翻弄されたのは投資家と都市銀行である。新韓銀行は2018年1月12日、ビッソム、コービット、イヤー・ラボ(EYA LABS)など仮想通貨取引所への入金を停止して、出金のみ可能な措置を取ることを決め、ハナ銀行も仮想通貨と距離を置くことにした。
取引所閉鎖と併せて取引実名制の導入も有力なオプションに上がっていたが、取引実名制を導入してすぐに政府が取引所を閉鎖すればシステム導入にかけるコストが無駄になる。金融情報分析院が、仮想通貨を利用した資金洗浄の痕跡が発見された場合は銀行も処罰すると発表し、仮想通貨の取引が少ないハナ銀行はリスクの割にメリットが小さいという判断が動いた。