最新記事

エネルギー

シェール革命は終わらない 今度はカナダが舞台

2018年2月2日(金)08時21分

セブン・ジェネレーションズと、同じくカルガリーに拠点を置くエンカナは、デュバネイとモントニーで開発を行う主な生産者の一部だ。一方、英蘭系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルや米コノコフィリップスのような世界的な石油メジャーは昨年、オイルサンドから撤退したが、カナダのシェール資産の開発は進めている。

米石油大手シェブロンは昨年11月、デュバネイで同社初のカナダのシェール開発に着手すると発表。同社の広報担当者は、北米で最も見込みあるシェール開発の機会の1つだと語った。また、コノコフィリップスのアル・ヒルシュバーグ上級副社長も同月、モントニーに大量生産と利益のポテンシャルをみていると述べている。

シェルは今年、米国で最大級の生産高を誇るテキサス州西部のパーミアン盆地に次いで、デュバネイに投資する計画だと、同社の広報担当者は説明。「われわれは、セディメンタリー盆地で応用できる何かをパーミアンで学ぶことができるかもしれない。またその逆も同様である」と話した。

カナダのエネルギー当局者は現在、新たな投資を呼び込むため、「タイトオイル(軽質油)」とも呼ばれるシェール資源に期待をかけている。

「アルバータ州のエネルギー開発の未来をけん引するのは、主に軽質油と液化天然ガスになっていくとわれわれはみている」と、オイルサンドとカナダのシェール資源の大半が眠る同州のエネルギー大臣、マーガレット・マックウェイグ・ボイド氏は語った。

フラッキングの未来

オイルサンド開発は2010─14年、アルバータ州経済の成長率を年率5.5%に押し上げた。これは国全体の成長率の約2倍である。だが、2014年の石油価格の急落により、同州はリセッション(景気後退)に陥ったため、生産者は計画していたプロジェクトのうち、少なくとも総額約320億ドル(約3.5兆円)分の中止に追い込まれた。

カナダ石油生産者協会によると、オイルサンドへの設備投資は2017年、3年連続で減少しているが、他の石油・ガス投資は前年比40%増の約310億カナダドル(約2.7兆円)だった。今年はさらに330億カナダドルにまで増加する見通しで、これはオイルサンド投資予想額のほぼ3倍である。

シェールオイル・ガスの水圧破砕は、オイルサンドからタールのようなビチューメンを抽出するよりも、少ない投資で利益を早く生むことが可能だ。シェール生産はまた、炭素排出が少なく、環境保護団体が「タールサンド」と揶揄(やゆ)するものに資金提供したがらない海外投資家の主な懸念にも対応できる。

「過去10年はオイルサンドに支配され、(シェール開発の)機会を逃していたかもしれない」と、エンカナのダグ・サトルズCEOは昨年11月、ブリティッシュ・コロンビア州で行われた会議でこのように発言。「こんにちの平均的な精製油1バレルよりもずっと二酸化炭素排出量が少ない」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中