激怒する韓国選手も 北朝鮮と平昌五輪統一チーム結成に韓国世論は猛反発
国内分裂
こうした国民の反発は、韓国からの一方的な支援となりがちな北朝鮮に対する外交が、いかに国内を分断させ論争の火種であり続けているかを示している。朝鮮戦争(1950─53年)が平和条約ではなく休戦協定で終結したため、厳密に言えば、両国はいまだ戦争状態にある。
リベラルな文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は、10年近くに及ぶ保守政権下で凍結された北朝鮮との関係を改善したいと望んでおり、開会式や閉会式での合同入場や、1つの国家として一緒に競技に臨む合同チーム結成など、五輪で南北融和を示すことを提案している。
だが、韓国アイスホッケー連盟は体育省から「準備をしろ」と言われた以外に詳細は伝えられていないと、前出の連盟幹部は明かす。
「正直言って、何が起きているのかさっぱり分からない。北朝鮮チームと話す手段がないため、『準備をしろ』というのがどういう意味なのか見当もつかない」
選手の登録枠や試合戦略、合同チームを率いるヘッドコーチの任命など、解決しなければならない問題は山積している。
「こうした極めて重要かつ基本的な問題は、何一つ話し合われていない。それなのに、3週間後にはオリンピックで初戦を迎える。信じられるか。まったくナンセンスだ」と同幹部は語った。
都・体育相は、登録枠を増やすため、韓国選手が外されることはないと主張し、アイスホッケー女子の合同チーム結成案を擁護している。
また、同チームを「コーチする権利」は韓国が有すると、都氏は国会で15日述べた。
懐疑的な世論
五輪開催地・平昌のある江原道の崔文洵(チェ・ムンスン)知事は、否定的な韓国世論について、歴代の保守政権下で冷え切った南北関係の影響かもしれないと語った上で、北朝鮮が五輪に参加したら、世論も変わるだろうと話す。
「過去9回の五輪で南北は合同行進を行い、世界から祝福を受けた。それに反対する人はほとんどいなかった」
だが、ソウルでエンジニアをしているという26歳のKim Daeさんは、合同チームをつくる意味が分からないと語る。
「何のための合同チームなのか、理解できない。オリンピックで異なる2つのチームが一緒にプレーするよう強制されているようにしか思えない。そもそもこの合同チームで誰が得をするのか」
世論調査会社リアルメーターによる8日の調査では、五輪期間中に北朝鮮代表団の滞在費などを支援するという韓国政府の計画には54%が賛成、41%が反対と答えた。
保守系議員たちは、潜在的な問題が政治的利益に値するのかと疑問を呈した。
「北朝鮮が平昌五輪を政治プロパガンダに利用しようとしていると、多くの人は懸念している」と、Kim Ki-sun議員は15日語った。「過去の五輪で合同行進した後、どのくらい平和は続いたのか」
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[ソウル 16日 ロイター]