イエメン、サレハ前大統領の殺害はなぜニュースなのか
サレハは12月2日、突然フーシ派との連携解消を発表。サウジアラビア主導の連合軍との関係改善を訴え、対話の用意があると表明した(数日前には、フーシ派の後ろ盾であるイランに内戦への関与を強めるよう求めたばかりだった)。
怒ったフーシ派は、イエメンの政治と軍事を巧みに操ってきたサレハをサヌア郊外で殺害。イエメンはさらなる混乱の淵に突き落とされた。
サレハの殺害を受けて、未解決の課題や新たな疑問が浮上している。なかでも差し迫った疑問は、新たに生まれた権力の空白に、イエメンがどう向き合うかだ。
息子を後継者として育てていたが
第一の問題は、誰がサレハの後を継ぐのかということだ。サレハは生前、GPCの組織内で息子のアフメド・サレハを指導し、一定の政治権限を持たせていた。サレハとその支持者らは、イエメン内戦の開始前からアフメドを将来大統領の座に就かせようと後押ししていた。
アラブ首長国連邦(UAE)がすでにアフメドをサレハの後継者として承認していた、という未確認情報もある。だが、サレハの死後、GPCがアフメドを党の指導者として認めるかどうかは不透明だ。
第二の問題は、サレハに従ってきた武装勢力が、このまま忠誠を誓い続けるかどうかだ。武装勢力の指揮官は権力を争う傾向が強いうえ、フーシ派を敵に回すより再度手を組もうとする指揮官が出てくる可能性がある。これら2つの問題の答えが出るまで、しばらく時間がかかるだろう。
フーシ派はサレハの殺害を歓迎し、現在の指導者アブドル・マリク・アル・フーシは12月4日のラジオとテレビの演説で、「裏切り者の陰謀に勝利した」と宣言した。だがフーシ派が今後、これまでサレハが率いてきた勢力と連携するかは不明だ。
地域レベルでは、焦点になるのは内戦と湾岸諸国の軍事介入の行方だ。もしサレハがサウジアラビア連合軍との軍事的、外交的な関係改善に成功していれば、彼は比較的寛大な形でサウジアラビアとUAEを内戦から撤退させていただろう。
だが、国内でフーシ派に対する反乱を煽るサレハがいなくなれば、サウジアラビアにもUAEにも友好的なイエメン指導者はそういないだろう。サレハ政権で国防大臣を務めたアリ・アル・アフマルが有力だが、彼にはイスラム教主義者やアルカイダとの人脈があり、とくにUAEは嫌がるはずだ。
そこでトランプ米政権の出方が問題になる。ドナルド・トランプ大統領の「アメリカ第一主義」に則れば、アメリカの政策は今後も変わらなそうだ。米政権が望むのはイエメン軍内部のテロ因子を叩くことで、内戦の背景にある根本問題に関心はない。