トランプ政権の輸出企業向け税制優遇、EUと貿易摩擦の火種に
12月21日、米議会が可決した税制改革法案に含まれる輸出企業への税制優遇措置は、WTOのルール違反のように見える。このため法律専門家は、EUとの大きな貿易紛争を引き起こす公算が大きいと警鐘を鳴らしている。写真はEU旗。ロンドンで18日撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)
米議会が可決した税制改革法案に含まれる輸出企業への税制優遇措置は、世界貿易機関(WTO)のルール違反のように見える。このため法律専門家は、欧州連合(EU)との大きな貿易紛争を引き起こす公算が大きいと警鐘を鳴らしている。
いくつかの米企業にとって今回盛り込まれた優遇措置は、米欧間で最近数十年における最大規模の紛争につながり、2006年に廃止された輸出優遇税制(FSC税制)の2倍の恩恵にあずかれるかもしれない。
この「海外由来無形資産所得(FDII)向け優遇税制」は、新たな法人税率が21%になるのに対して、約13%の税率が適用される。法案で「無形資産所得」の定義は明らかでないものの、特許や商標、著作権、ノウハウなどから発生する所得と理解されている。
ロイターが過去の企業の年次報告や説明資料などを分析したところ、マイクロソフト
貿易データからすると、米企業はソフトウエア、技術、特許権などの無形資産を毎年数千億ドル輸出しているためだ。
しかし法律専門家や欧州連合(EU)欧州委員会は、FDII向け優遇税制が輸出補助金に当たり、米企業を欧州企業に対して競争面で有利にする措置だとみている。
ブリュッセルの法律事務所VVGBのWTO専門家フォルカート・グラアフスマ氏は「われわれはFSC税制の焼き直し版に直面しているようだ。米国は学習していない。この提案は明らかに現行のWTOのルールと慣行に違反している」と述べた。
欧州委は、米製税改革法案可決前の段階でムニューシン財務長官宛てに書簡を送り、FDII向け優遇税制がWTO協定と矛盾すると指摘。「税制改革案には欧米間の貿易・投資フローに深刻な打撃を与えるリスクをはらんだ要素が含まれる。これを避けるのが共通の利益になるとわれわれは考える」と訴えた。
18日公表の米国の税・法律専門家十数人による調査報告でも、FDII向け優遇税制はWTO協定の履行義務違反になる可能性が大きいとの見解が示された。