慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー
筆者に送られてくるサンフランシスコ発のメールの中に、突然、慰安婦に関する情報が増え始めたのは、今年10月半ばのことだ。
サンフランシスコ市長が貴州省に
ちょうどそのころ、何が起きていたかというと、サンフランシスコのエドウィン・リー市長が、中国の貴州省を訪問していた。エドウィン・リーは中国名「李孟賢」という在米華人だ。中国の広東省に本籍があるが、アメリカのシアトルで生まれたため、アメリカ国籍を持っている。2011年1月にサンフランシスコ市長に当選。サンフランシスコでは初めての在米華人による市長就任である。
中国政府の通信社である「新華網」が、大々的に李孟賢市長誕生の祝賀報道を行なった。中国メディアではエドウィン・リーの中国名、李孟賢を用いて報道しているので、以下、李孟賢のみを使用する。
その李孟賢は2017年10月14日、中国の貴州省を訪問している。
貴州省は習近平総書記が、第19回党大会(中国共産党全国代表大会)の「代表」選挙に当たって選んだ選挙区だ。
党大会の代表選挙は2016年10月に開催された中共中央政治局会議で発布された選挙通知に従って、8カ月間をかけ2017年6月まで行なわれた。全国8900万人の中国共産党党員の中から党大会に参加する約3000名の代表を選出する。党の代表を選ぶので投票権を持っているのは、当然、党員のみである。
中央にいるチャイナ・セブンは、この政治局会議で、どの選挙区を選ぶかを決定した。それによれば、たとえば習近平は「貴州省」という選挙区に決まり、李克強は広西省に決まった。
習近平に話を限れば、2017年4月、習近平は貴州省全党員の全ての票を得て満票で貴州省代表に当選している。中共中央総書記が選挙区に選んだとなれば、貴州省の人気は上がるし、選んだからには、その理由がある。
実は理由は二つあり、一つは貴州省の貧困度が高く経済発展を促さなければならないという側面で、もう一つは習近平子飼いの陳敏爾が貴州省党委員会の書記を務めており、陳敏爾を応援したかったからだ。今年7月に重慶市の書記、孫政才が拘束されたことから、陳敏爾が重慶市の書記に就任し、すわ、「ポスト習近平」かと話題を呼んだことがある。
そんなことから、李孟賢は中国を訪問するのに、自分の本籍地である広東省ではなく貴州省を選ぶというのは、なかなかに目先が利く御仁(ごじん)ではないか。