最新記事

中国

韓国を操る中国――「三不一限」の要求

2017年11月30日(木)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

居丈高な態度が目立つようになった中国の王毅外相 Tyrone Siu-REUTERS

韓国の外相が訪中し王毅外相と会談。10月末の中韓合意文書(三不)以外に、さらに一つの「制限」が加わった。韓国は中国側に付くつもりなのか? 日本を日米韓協力体制から外そうとする中国の意図が見えてくる。

まるで属国――中国が韓国に要求する「三不一限」とは?

中国の王毅外相は22日、訪中した韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会談した。 王毅は康京和に10月31日に発表した「三不」だけでなく、「一限」も守るように強く要求した。

三不」とはこれまで何度か書いてきたように以下の三つだ。

1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない。

2.韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない。

3.THAAD(サード)の追加配備は検討しない。

これを中国語で書くと

1:韓国政府加入美国反導体系

2:韓美日安全合作会発展成為三方軍事同盟

3:韓国政府考慮追加部署"薩徳"系統

となる(美は米国のこと。薩徳はTHAAD)。どの項目にも「」という文字があることにご注目いただきたい。3つの項目にそれぞれ「不」があるので、これを「三不」と称している。

この「三不」に対して、王毅外相は22日に、合意文書には「現有のTHAADシステムの使用に関しては、中国の戦略的安全性の利益を損なわないよう、制限を設けなくてはならない」という「制限」も含まれているとして、韓国外相に要求した。制限は「一つ」なので、これを以て「一限」と称したわけだ。

これによりTHAADの機能に関する技術的な保証書の提出まで要求する可能性が出てくる。

王毅の姿勢が、どれだけ上から目線であったかは、23日付の中国共産党系新聞「環球時報」の社説「文在寅の訪中を成功させたければ、まずは"三不一限"を着実に実行せよ」を見れば明らかだ。

中国にひれ伏す韓国

文在寅大統領は韓国内における人気を高めるためにも、また日米などの国際社会に対して韓国の存在感を(少しでも?)アピールするためにも、何とか自分を国賓扱いしてほしいと中国に懇願してきた。そして米韓軍事同盟に基づいて韓国にTHAADを配備したことによって中国から受けた経済報復を、何としても解除してもらいたい。そうしないと韓国経済が持たないからだ。

そのため韓国は中国に対して「土下座外交」と言っても過言ではないような低姿勢ぶりなのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、小売関連が堅調 円安も支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中