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日米関係

アメリカは「安倍トラ」に無関心

2017年11月20日(月)11時15分
辰巳由紀(米スティムソン・センター日本研究部長、キャノングローバル戦略研究所主任研究員)

今回のトランプ訪日をめぐる日米メディアの関心の差も、トランプとの個人的関係の構築に力を注ぐ日本政府の努力が、肝心なところで期待するほど報われない可能性があることを示唆しているのではないか。

もっとも、日米首脳会談に臨むに当たり、トランプも安倍も複雑な事情を抱えていた。トランプは、今回の歴訪でアメリカがアジア太平洋地域において引き続き指導的役割を果たす用意があると同盟国を安心させると同時に、国内の支持層に選挙公約である「不公平貿易の是正」に努力していることをアピールしなければならなかった。

迎える安倍もトランプとの親密な関係をアピールすると同時に、経済問題ではアメリカの圧力に屈しない姿勢を貫く必要があった。

そう考えれば、首脳会談後に発表された成果に関心が集まらなかったとはいえ、2人の親密な個人的関係を宣伝できたトランプ訪日は「成功」だったと言えるのだろう。しかし、今回合意された日米の政府系金融機関のアジア、中東、アフリカでのインフラ投資協力や、エネルギー開発に関するパートナーシップなどは、一筋縄では具体化できない案件ばかりだ。

「安倍トラ」で生み出されたふわふわとした高揚感はそう長くは続かない。その意味で、今回の訪日は、その場を笑顔でやり過ごしたものの、難しい宿題ばかりを残した「問題先送り訪日」だったのかもしれない。

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[2017年11月21日号掲載]

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