最新記事

ポピュリズム

イタリア政界、来春の総選挙にらみ主要政党がポピュリズム政策乱発

2017年11月16日(木)09時16分


無責任な約束

チューリン大学教授(社会学)で有力な政治評論家でもあるルカ・リコルフィ氏は、今度の選挙では「ハングパーラメント(中ぶらりん議会)」が誕生しそうなので、政治家たちは約束し放題でも、恐らくそれを守らなくて済むと考えているとの見方を示した。

リコルフィ氏は「理性的な政党が存在しないので、レンツィ氏も有権者を取り込むために無責任な約束が可能になる。なぜなら五つ星運動や中道右派がもっと無責任に振る舞っているからだ」と話す。

ベルルスコーニ氏は1994年に「すべての人への減税」を約束して政界入りして以降、しばしばポピュリスト政治家と呼ばれてきた。しかし今や同氏やレンツィ氏が、穏健な政治指導者として五つ星運動の「暴走」にブレーキをかける役回りとなっている。

ベルルスコーニ氏の主な連携相手は、マッテオ・サルビーニ氏が率いる北部同盟だ。この北部同盟も独自の並行通貨構想を持っているほか、個人と企業の税率を15%に一律化する新税制(フラットタックス)を導入することを望んでいる。

北部同盟の広報担当者は、フラットタックスで歳入は400億ユーロ(GDPの約2.5%)減少するが、脱税が少なくなることと経済成長加速ですぐに穴埋めできると説明した。

同担当者は、政権を取れば最初の予算案にフラットタックスを盛り込むつもりで、財政赤字が増えたりEUが反対しても、何の問題もないと主張。「われわれは現行の財政赤字目標を尊重する意図はない。われわれは欧州に対してもらう以上の支払いをしている以上、他人の意見など気にしない。一体誰がわが国の歳出や財政赤字に口を出せるのか」と言い切った。

過半数獲得勢力見込めず

ベルルスコーニ氏もフラットタックスを公約しているものの、税率は23%と北部同盟より高く、より段階的に導入する方針。また同氏は、五つ星運動が最低所得保障制度を提唱していることに対抗し、低所得層向けに新たな給付金を交付することも表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中