中国養豚業に激震、環境対策強化で閉鎖=廃業を迫られる農家
選択肢なし
前出のZhangさんの養豚場は貯水池に近すぎたため、農場を閉鎖して豚を売却する以外の選択肢がほとんどなかった。
強化された新公害基準は、水源地や人口密集地近くでの畜産を禁止している。他の地域でも、糞尿処理の基準が厳格化された。
チャイナ・アメリカ・コモディティー・データ・アナリティクスのYao Guilin氏は、環境検査は食肉の供給と価格に長期的に大きく影響すると指摘する。
小規模養豚場から屠畜(とちく)場に出荷される豚の数は、今年2000万頭以上減少して3億8000万頭となる一方で、メガ養豚場の生産数は1500万頭しか増加しないと、Yao氏は分析する。
規制を守らない畜産農家の悪臭や汚水に長年苦情を訴えてきた多くの村は、養豚場がなくなったことを歓迎し、代わって果樹園やエコツーリズムから収益を上げたいとしている。
だが、ロイターが取材した、北京や江蘇省、山東省、河南省の農村部にある飼育頭数50─1万5000頭の小規模農家8軒は、それぞれ将来への不安を口にした。
北京西部のある養豚農家の女性は、5000頭強の養豚場を閉鎖する見返りに政府が約束した2000万元の補償金を元手に、ホテルを建設する計画だという。だがほとんどの農家は、補償金では豚や設備を安値で売った損害をカバーできないと言う。
取材した農家のうち4軒は、まだ補償金を手にしておらず、他の収入源を見つけるのに苦労している。養豚以外の職業経験はほとんどないという。
「地元政府は、50万元の補償金を約束した。だがコストを穴埋めするには、少なくとも100万元必要だ」と、先月豚100頭を売却したという山東省の養豚業の男性は語った。
山東省で600頭強の養豚業を営む別の農家の男性は、地元当局から、数年以内に閉鎖の指示がある見通しだと告げられたという。当局側は、養豚業禁止区域を拡大するとみられている。
廃棄されたワクチンやもう必要がなくなった飼料が積み上がった北京近郊の農場では、前出のZhangさんが、近くでオーガニックな養豚場の建設を検討していると語った。だが政府の補償金がなければ、動くこともできない。
「心血を注いだ事業が、すべて消し飛んでしまった」
(翻訳:山口香子 編集:伊藤典子)
[ZHOUCUN(中国) 5日 ロイター」
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