最新記事

インド

トイレ普及急ぐインド 「辱め」を受ける外で排泄する人たち

2017年11月7日(火)19時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

インド・ジャイプールの街中にあるトイレ mathess-iStock.

<インドのトイレ整備プログラムが過激すぎる。用足し真っ最中の写真と名前の投稿を呼び掛けるテレビ番組まで現れ、やりすぎを非難する声が上がっている>

インドではナレンドラ・モディ首相が推し進める一般家庭のトイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」が、2019年の節目を見据え加速している。

外でして水で洗う、が当たり前だった

インド国勢調査によると、一般家庭で専用のトイレを設置しているのは2011年にはわずか53%の世帯。2014年に誕生したモディ政権は精力的にトイレ問題の改善に取り組んでいるが、力の入れ方が少々荒っぽいのか反発する声が上がっている。

インドを訪れた経験のある人はわかるだろうが、インドでは大都市でも少し離れた川辺やスラムなどで毎朝、後始末用の水を入れた容器片手に用を足す光景に遭遇する。老若男女は問わない。

これはもちろん衛生的に良くない。香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは、人間の排泄物が放置され衛生環境が悪くなり、毎年何十万人もの死者を出していると指摘する。

このような状況を改善しようとモディ政権は国を挙げてトイレ普及に臨んでいるが、草の根の現場では軋轢が生じている。

パトロール隊の「辱め作戦」

インド政府はトイレ設置と併せて、屋外で用を足す人を取り締まるパトロール活動もしている。公務員と地域のボランティアで結成された「モチベーター」と呼ばれる監視チームが早朝の村を巡回し、用を足している人を見つけたら写真を撮ってその行為を晒すという。「これは嫌がらせだ」と声を上げる村人もいる。

Santram Gonjare(55)はある朝、用を足そうと家を出て道路沿いを歩いていたところをパトロール隊に見つかってしまった。排泄後に手を洗うために水を張った桶は取り上げられ、目の前で地面に叩きつけ壊された。

家に帰ったGonjareは恥ずかしさと悔しさでうなだれた。実は彼は家にトイレを設置しており、この日外に出たのは9人家族でトイレが混み過ぎて順番が回ってこないという理由からだった。

「どうしてこんなことが許されるんだ」とGonjareは嘆く。

市民に羞恥心を与えるだけでなく、厳しい罰則を設ける地域もある。マハーラーシュトラ州ビード県ではパトロール隊に見つかった場合、国の給付金を受けられない上に公職に就くことができなくなる可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比横ばい EV移行加速=

ビジネス

ドイツ経済、企業倒産と債務リスクが上昇=連銀報告書

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中