ロシア疑惑で初起訴 モラー特別検察官がトランプに示した「本気度」
10月30日、今回の起訴は、ホワイトハウスやトランプ氏の側近らに、明確な意図を伝えた。モラー連邦特別検察官(写真)は本気だ、ということだ。ワシントンで6月撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)
トランプ米大統領は、ロシアによる大統領選干渉疑惑と自身の選挙陣営との関連に絡む捜査で行われた初の起訴を一蹴した。だが今回の起訴は、ホワイトハウスやトランプ氏の側近らに、明確な意図を伝えた。モラー連邦特別検察官は本気だ、ということだ。
検察側は、トランプ陣営のポール・マナフォート元選挙対策本部長とリック・ゲーツ元代理人をマネーロンダリング(資金洗浄)などの罪状で起訴し、別の選挙顧問から罪を認める供述を確保。モラー検察官はこれにより、犯罪行為を捜査するため過去に深く切り込み、与えられた広範な捜査権限を積極的に行使する意思を明確にした。
ホワイトハウスは表向きには、一連の起訴は大統領やその選挙陣営には無関係だと表明したが、トランプ氏の側近の中には、モラー氏が次に何を、そして誰を狙うのか心配している人もいる。
「検察は、この捜査で関係者に接触する時にはその力を誇示し、本気だということを相手に知らしめている」と、元連邦検察官のパトリック・コター氏は言う。「だからもし検察から接触されたら、ちゃんと事情を説明した方がいい。マナフォートはそうしなかったから、今回のような事態になった」
マナフォートとゲーツの両被告は、マネーロンダリングのほか、脱税や米国に対する謀略などの罪で起訴された。2人は30日、罪状を否認した。
罪状を詳細に列挙した今回の起訴は、モラー氏による「先制の一撃」のように見える。
モラー氏は、2016年の米大統領選でのトランプ陣営とロシアの癒着の可能性を捜査していた連邦捜査局(FBI)のコミー長官がトランプ氏に解任されたことを受け、ローゼンスタイン副司法長官から特別捜査官に任命された。
モラー氏は、癒着疑惑のほか、「捜査の過程で浮かび上がるいかなる事案」についてでも、捜査をする権限が与えられている。
トランプ氏は、ロシア側との癒着を一切否定し、一連の捜査は「でっち上げ」で「魔女狩り」だとたびたび批判している。ロシア側も、2016年の大統領選への干渉を否定している。
30日に行われた初の起訴で、モラー氏は捜査権限を恐れず行使することを示した。そしてトランプ政権の幹部も、そう受け止めた。
「より大きな見地から心配しているのは、ローゼンスタイン司法副長官がモラー氏にここまで大きな権限を与えたことで、モンスターが生まれたことだ」と、元ホワイトハウス高官は語った。
トランプ陣営の元アドバイザーは、捜査が結果的に、トランプ氏のビジネスに抵触することへの懸念を表明した。