最新記事

中国共産党

習近平が絶対的権力を手にした必然

2017年10月31日(火)16時00分
フォーリン・ポリシー誌中国特派員(匿名)

magw171031-china02.jpg

共産党大会で席につく江沢民元国家主席 Jason Lee-REUTERS

集団指導体制の終わり

党大会までの期間の習の目立ち方は、毛沢東以来の中国の指導者をはるかに上回っている。胡の場合は、国家主席時代でさえ存在感がなかった。だが習はあらゆるところに存在する。その姿はスローガン、ポスター、毎日のテレビに現れる。

習はこの権力で何をするのか。彼が抵抗を圧殺する権限を持った今、経済改革が次のステップだと信じる楽観主義者は、少数ながら存在する。

だがこれまでの兆候からすると、彼が目指すのは、経済など、生活の全てにおける共産党政権の優位性だろう。

それは党大会の冒頭で習自身が述べたことでもある。アメリカ人が9.11テロ以来体験しているように、治安を最優先にした国が警戒を緩めることは、強化するよりも難しい。

習の本当の人気がどれほどのものかは判断が難しい。確かに彼の基盤は、共産党の中心的な支持層である中年の住宅所有者にあるようだ。だが党内の基盤はそれほど確実ではない。

習の3代前に最高指導者だった鄧小平の功績は、49年の建国時から続く政治的な復讐のサイクルから国を脱出させたことだ。

その取り決めの一部である集団指導体制は、最高の地位にいても永遠に安泰ではないと知っている歴代指導者に支持されてきた。習は全てではないにしても、中国をまとめてきたそのつながりの一部を切り離した。

笑みを浮かべ、生き残るために卑屈な態度を取っても、党内の多くの人は個人的な憎悪を育んでいる。つまり習は22年に自分の正式な地位を退いても、報復を恐れて自らの権力を簡単に手放すことはできない。

重慶や大連でも、誰一人として習を直接的には批判しない。しかし今も薄を褒める人はいる。それは、いわば暗号化されたメッセージだ。自分たちのお気に入りだった政治家を失脚させることで権力基盤を固めた男を、決して許さないぞというメッセージである。

(筆者は匿名の中国特派員)

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年10月31日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 19日に発効

ビジネス

NY連銀総裁「金融政策はデータ次第」、政府巡る不確

ビジネス

米経済活動、小幅から緩やかに拡大 見通しは楽観的=

ビジネス

米CPI、インフレ圧力緩和継続を示唆=リッチモンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中