最新記事

薬物

米国の「オピオイド危機」欧州にも 中国からより強力な錠剤が流入

2017年10月30日(月)17時22分

10月26日、米国で近年最悪の薬物中毒死を引き起こしている鎮痛剤オピオイドの乱用について、欧州でも警戒を高めるべきだ、と専門家は指摘する。写真はオピオイド鎮痛薬の錠剤。米オハイオ州の薬局で6月撮影(2017年 ロイター/Bryan Woolston)

米国で近年最悪の薬物中毒死を引き起こしている鎮痛剤オピオイドの乱用について、欧州でも警戒を高めるべきだ、と専門家は指摘する。欧州でもこうした鎮痛剤の処方が増加しており、悪用の恐れがあるためだ。

米国におけるオピオイド中毒は、1980年代のクラック・コカインなど過去の薬物危機と比べ、過剰摂取による死者数も多く、その期間も長引いている。医療専門家は欧州への波及を危惧している。

トランプ米大統領は26日、オピオイドの乱用問題で、公衆衛生の非常事態を宣言した。これにより、中毒患者が治療を受けやすくなったり、対策に必要な連邦政府のスタッフの確保が円滑になるという。

鎮痛医薬品コンサルタントのキャシー・スタナード氏は、処方された鎮痛剤オピオイドの悪用という、米国の「まぎれもない公衆衛生上の大失策」を受け、鎮痛剤処方の際に患者が中毒症状に陥ったり、最終的にヘロインに手を出したりするリスクの検討が行われている、と語る。

「欧州では、米国における議論のすべての側面に留意している。ただし、われわれの議論も、米国同様に増加しているオピオイド処方件数が起点となる」と、スタナード氏はリスボンで開かれた中毒問題の国際会議で語った。

米連邦保健福祉省でオピオイド中毒を研究しているクリストファー・ジョーンズ氏は、米国では長年オピオイドの処方が死者数を押し上げてきたと述べた。

「だが、その増加は、2011年ごろ以降鎮静化している。現在、新たに問題として浮上しているのは、合成オピオイドだ」と同氏は語る。

特に中国の麻薬組織が、新たな顧客を引き付けるため、より強力で危険な合成オピオイドを製造しているという。

2000年から2015年にかけて、モルヒネの50─100倍強力な鎮痛剤フェンタニルなどの合成オピオイドによる死者数は11倍以上増加した。同時期のオピオイド全般による死亡増加率は、約3倍だった。

ジョーンズ氏によると、米国における薬物過剰摂取による死者数は昨年、約6万4000人に達しており、2015年の5万2000から大きく増加した。その半数以上にオピオイドが絡んでいた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中