国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・後編)
6:「加計学園の役員だったけれど......」木澤克之
立教大法卒・弁護士出身・東京都出身
就任:2016年7月19日/定年:2021年8月26日
《プロフィール》
新宿区の法律相談を担当し、法務省の人権擁護委員を歴任。立教大学出身者で初の最高裁判事。
獣医学部の新設認可をめぐって安倍首相の関与が疑われている学校法人「加計学園」の監事を務めていた時期がある。加計学園理事長も立教大出身であることから、この任命について国会でも問題視された。なお、他の弁護士出身判事と同様、日弁連の推薦を受けている。
2017年3月30日、民進党(当時)の木内孝胤議員が衆議院地方創生特別委員会で質問に立ったところ、まるで日弁連の推薦なしに木澤弁護士が最高裁判事に選ばれたかのような、事実誤認に基づく質問があった。山口厚判事の件と混同したとみられる。
《主な発言》
・2016年7月19日、最高裁判事就任会見にて。
「弁護士出身の自覚と誇りを持って、最高裁判事として取り組みたいと思います。零細企業の経営者や市民が、法律知識がないために苦労したりトラブルに巻き込まれたりすることに対し、直接手助けできる弁護士を選びました」
「(憲法改正について尋ねられて)国民的な議論をもとに、社会全体で決められることだと考えていきます。動向を注意してみていきたいと思います」
・『法学教室』2006年12月号。立教大学法科大学院で「民事実務の基礎」講義を担当。
「(学生に向けてのメッセージ)専門分野の実務能力を身につけることは当然のことですが、公共への奉仕という自覚を持って仕事をする法曹になってほしいと思います。宗教家・法律家・医者のことをプロフェッションといいますが、どのような意味でプロフェッションなのかを考え、また、法曹はいかにあるべきかを常に念頭に置いて仕事をしていく法曹になってほしいと思います」
《主な関与判決》
・建設作業員が勤務中の事故で脳脊髄液減少症になった労働災害について、「発症が確実に証明されていない」として、障害等級の引き上げを認めなかった二審判決を支持(※一審和歌山地裁は、障害等級の引き上げと障害年金の支給を認めた)。
・陸上自衛隊パレードの反対集会に、公共施設(金沢市役所前広場)を使わせない金沢市(石川県)の不許可処分を、憲法の定める集会の自由に反せず、適法とした。
・大阪市長選の立候補を表明した府知事について、その父と叔父が反社会的勢力の一員だと報じた週刊誌の記事に、名誉毀損はないと結論づけた原審判決を支持。「(首長としての)人格形成に影響しうる事実で、公共の利害に関わる」とした。