最新記事

法からのぞく日本社会

国民審査を受ける裁判官はどんな人物か(判断材料まとめ・後編)

2017年10月20日(金)17時33分
長嶺超輝(ライター)

7:「欧州サッカーファンの元英国大使」林 景一

京大法卒・外交官出身・山口県周南市出身
就任:2017年4月10日/定年:2021年2月7日

《プロフィール》
大阪府立天王寺高校卒。2011年の東日本大震災の当時はイギリス大使を務めており、約7000万円の義援金など、イギリスからの復興支援の橋渡し役を務めた。岩手県陸前高田市で大津波の被害に耐えた「奇跡の一本松」の種を、イギリスの植物園の「種子バンク」に寄贈したこともある。

ラグビーW杯英国大会(2015年)で、日本が南アフリカに奇跡的な勝利を収めた直後、ロンドンで開かれた外交セミナーに登壇し、「嬉しい。驚きましたねー。でも、日本が勝つと思ってましたけどね!」とコメントして、場を沸かせた(欧州サッカーのファンでもある)。

《主な発言》
・2017年、最高裁判事就任会見にて。
「世界が大きく変化し、日本の国も司法府も変化が求められる中で、何が変わるべきか、変わるべきでないのかを見つめていくことが必要」

「世界は安全保障などの分野で、秩序の根本が揺らいでいる」

・『正論』2017年2月号。
「日英関係にも難しい時期があったが、互いに相手がよく、『二人』で踊れるようになった。EU離脱は英国に『外』との関係強化への弾みを与えるもので、新『日英同盟』構築の好機なのだ。当面は『トランプ氏をどう説得するか』という共通目標を持って、協力、協調を高めていくことが重要だと思う」

・単著『イギリスは明日もしたたか――「EU離脱」「トランプ」...駐英大使の核心報告』(2016年、悟空出版刊)「はじめに」より。
「私は2005年から2008年まで駐アイルランド大使を務めた後、2011年から2016年5月まで駐英国大使として英国に勤務した。その経験に基づいて言えば、英国はこれまでも、そして明日以降もしたたかな国であるということ、日本はその英国から大いに学ぶべきだということだ。幸運にも、日本はそういう英国と基本的利害が共通している。そのことを認識し、英国と緊密に連携していくことが日本の国益になると確信している」

《主な関与判決》
・2016年参院選での一票の価値の最大格差「3.08倍」について、「合憲」判断の多数意見に同調はしたものの、実質的に「違憲状態」であったとの意見を示す。「2015年時点で、違憲状態を脱したとの評価を明言するにはためらいがある」「投票価値の平等の保障は国際的潮流である」

※なお、一票の格差の解消に関しては、地方の住人の声が中央にますます届きにくくなると懸念する声や、特に参院選では合区(複数の隣接した県を1つの選挙区とする)によって、選挙活動での移動の負担が重くなったり、地元と国会議員の結びつきが薄れたりしかねないと指摘されることもある。

◇ ◇ ◇

近頃はインターネットだけでなく、新聞やテレビ、ラジオも、限られた枠内とはいえ、国民審査について採り上げようとする気運が高まってきている。それでも、この制度の問題点や審査対象となる判事について、よく知らない人は多いのではないだろうか。

なお、筆者は今回の国民審査対象の判事をめぐるツイートのまとめページを作成している。関心のある方はそちらも参考にしていただけると幸いである。
https://togetter.com/id/nag_masaki

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北・東欧8カ国首脳、EUの防衛強化訴え ロシアは「

ビジネス

米ワーナー、パラマウントの買収案拒否の公算 17日

ビジネス

FRBの追加利下げ、インフレリスク高める可能性=ア

ワールド

トランプ氏支持率39%に低下、経済政策への不満広が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中