北朝鮮との裏取引を許さないアメリカの(意外な)制裁力
取引額が年間1億ドルに迫るという北朝鮮の武器不正輸出に歯止めをかけられるのか KCNA-REUTERS
<同盟国エジプトが武器輸入を図った昨年の事件で、米政府の対応は制裁の本気度を示した>
10月1日、北朝鮮製武器の不正取引事件の奇妙な顚末が、米紙ワシントン・ポスト電子版の報道で明らかになった。
事件が起きたのは昨年8月だ。米当局からの情報に基づいて、エジプトの税関当局が同国沖でカンボジア船籍の貨物船を拿捕。北朝鮮を出発地とするこの船からは、携行式ロケット弾約3万発(推定価格2300万ドル相当)が見つかった。
その買い手は、実はエジプト軍の代理人であるエジプト企業だった。同国がアメリカから巨額の支援を受けていることを考えると、驚きの事実だ。
トランプ米政権は今年8月、エジプトへの経済・軍事支援を3億ドル削減・留保すると決めた。エジプト国内での人権侵害を懸念してのことだとされたが、複数の米当局者によれば、決断の契機はこの武器輸入事件だ。
支援削減は、アメリカが北朝鮮問題を最重要視する現状を浮き彫りにする。トランプ政権の目的はエジプトを罰すると同時に、同盟国であっても北朝鮮と武器取引をすればどうなるか、見せしめにすることだった。
この出来事からは対北朝鮮制裁の実態も浮かび上がる。すなわち、国連による制裁とアメリカによる制裁の在り方だ。
北朝鮮が初めて核実験を行った06年、国連安保理は最初の制裁決議を採択。北朝鮮からミサイルや関連物資を調達することが禁じられた。北朝鮮が2回目の核実験を実施した09年には、北朝鮮による武器の輸出入が全面的に禁止された。
法施行の徹底をアピール
国連加盟国は対北朝鮮武器禁輸措置を遵守すべきであり、北朝鮮から武器を輸入したエジプトは違反を犯したことになる。ただし、強制的に制裁を執行する権限を持たない国連が、北朝鮮の不法な武器取引に歯止めをかけるのは不可能だ。
国連の専門家の推定によると、北朝鮮の武器取引額は年間1億ドル近く。韓国の朝鮮日報はその3倍の数字を挙げている。