トランプ、オバマケア見直す大統領令に署名 医療機関や保険会社は批判
10月12日、トランプ米大統領(中央)は、現行の医療保険制度改革(オバマケア)の規制を一部緩和し、米国民がより簡素な保険商品を購入することを可能にする大統領令に署名した。ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
トランプ米大統領は12日、現行の医療保険制度改革(オバマケア)の規制を一部緩和し、米国民がより簡素な保険商品を購入することを可能にする大統領令に署名した。
オバマケアを巡っては、トランプ大統領が改廃を看板政策の一つに掲げてきたものの、共和党内で十分な支持を集めることができず頓挫続きとなっていた。今回の大統領令をもってオバマケアを弱める狙いがある。
オバマケアでは保険プランで出産や新生児のケア、処方薬やメンタルヘルスなど10項目をカバーすることが義務付けられてきた。今回の大統領令により、複数の中小企業は組合を結成し、より安価で要件の少ない保険プランを州を越えて購入できるようになる。
これらの組合は保険を団体で購入することにより、医療費が高額な病気にかかった組合員の割合が増えるリスクを低減でき、中小の雇い主の負担増加を防げるという。また、従業員向けの保険購入にあたり、組合としてのほうが保険会社と交渉しやすくなるとホワイトハウスは説明する。
トランプ大統領は署名式で「オバマケアにかかるコストは法外で、すべてを駄目にする」と発言。今回の大統領令は「始まりに過ぎない」としたうえで「オバマケア改廃の貫徹に向け議会に圧力をかける」と語り、政権が追加措置を取る方針を鮮明にした。
ただ、新たな保険プランは2019年まで選択できない可能性があるほか、民主党所属の州司法長官が大統領令に反対して法的措置を取る可能性もある。
民主党のシューマー上院院内総務はトランプ大統領を批判。議会でオバマケア改廃法の可決に失敗したため、大統領は単独でオバマケアの破壊工作を行っている、と語った。
アメリカン・エンタープライズ研究所の医療保険の専門家、ジョセフ・アントス氏は、今回の大統領令が大きな影響を与えるとは考えにくいと指摘。もともと保険コストが低い地域の雇い主はコストがより高い地域の企業と一緒に保険を購入したいと思わないため、全体としてコストが大幅に節約される可能性は低いという。
また、トランプ大統領が組合の医療保険プランを拡充する法的権限を有しているかどうかを疑問視する声もある。