一帯一路が生む新たな腐敗の構図に怯える習近平国家主席 REUTERS
元重慶市書記・孫政才の党籍が剥奪され、重慶市の党大会代表十数名が代表を取り消された。「政敵を根こそぎ」という分析があるが、違う。習近平が最も恐れていた一帯一路に新しい腐敗が生まれ始めたのだ。
孫政才の党籍剥奪と重慶市代表の取り消し
今年7月に拘束された重慶市書記(=中国共産党重慶市委員会書記)だった孫政才は、第18回党大会7中全会を待たずに、9月29日、党籍が剥奪された。中共中央紀律検査委員会の報告を中共中央政治局会議が採決して決まった。それに伴って、10月18日に開幕する第19回党大会の重慶市委員会代表も同時に取り消され、2300人の党大会代表の数が、結果的に13人少なくなり、2287人という異例の事態となった。
これに関して、「習近平の政敵、孫政才に連なる関連幹部をも徹底的に潰しておかないと権力闘争に禍根を残すから」といった分析が散見されるが、それは適切ではない。
まず孫政才を「ポスト習近平」だった人物と位置づけるのも正しくない。孫政才はあくまでも李克強国務院総理の次期候補者であったのであって、習近平総書記あるいは習近平国家主席の後釜としてリストアップされたことは一度もない。「ポスト李克強」であった。
つぎに孫政才は共青団の流れでもなければ江沢民の流れでもなく、どちらかと言えば、遠くは温家宝夫人の愛顧を得、次は劉雲山の息子との因縁浅からぬ関係により腐敗に入っていった経緯があるため、「腐敗」以外で、習近平の「政敵」といった存在ではなく、特に属している派閥もない。
一帯一路における新しい腐敗
孫政才の最も大きな罪は、習近平が国家プロジェクトとして中華民族の命運をかけている「一帯一路」(陸と海の新シルクロード)経済圏における新しい腐敗の温床を創り出したことにある。
実は一帯一路沿線国家の「文明度」は必ずしも高くなく、賄賂や口利きなどが日常現象である国が多い。習近平政権以来、中国国内では腐敗摘発が厳しいので、沿線国に入ると、いきおい気が緩み、元の中国流文化が一瞬で復活し、腐敗に巻き込まれることもあれば、むしろ自ら積極的に腐敗行動に走る場合もある。