最新記事

ノーベル賞

なぜノーベル平和賞の受賞者は、その後に世界の「失望」を招くのか

2017年10月4日(水)10時45分

ノーベル平和賞の歴史を研究するAsle Sveen氏によれば、受賞者に対する失望リスクの原因は、ノーベル委員会が候補者を選ぶときの基準が、彼らがもたらしている希望や近年の業績であって、キャリア全体を見ているわけではないからだと指摘する。

「誰かを推すことは常にリスクが伴う。政治に関わることになるからだ」とSveen氏は語った。「将来何が起きるか知ることはできない」

「だからこそノーベル平和賞は、他のあらゆる平和賞とは別物なのだ」と彼は言う。「さもなければ、非常に高齢の人にたいして、彼らが亡くなる直前に賞を贈ることになるだろう」

今年有力視されている受賞候補は、2015年のイラン核開発合意の関係者がいる。イランのザリフ外相、EUのフェデリカ・モゲリーニ外交安全保障上級代表、米国のケリー元国務長官などだ。

イランが国際的な制裁の解除と引き換えに核開発プログラムを自粛した合意は、イランと米国双方の政界の強硬派から批判されてきた。トランプ米大統領は、今月の国連における演説で、イラン核開発合意を「米国にとって頭痛の種」として、米国政府が合意を破棄する可能性を示唆している。

ノーベル平和賞に詳しい専門家らによれば、この合意は対立勢力間の画期的なものであり、ノーベル委員会はそうした合意を評価する傾向があるという。

「(国連憲章)第7章の対象国について平和的な解決に至ったのは、この合意が初めてだ」。オスロ国際平和研究所のヘンリック・アーダル所長はそう述べ、イランの核開発プログラムが、国連安全保障理事会においてもはや脅威と見なされなくなった経緯を指摘する。

「EUとイランに重点を置くことで、イラン核開発合意が幅広い支持を得ているというシグナルを米国に与えることにもなるだろう」とアーダル所長は語った。

他の候補者には、法王フランシスコ、シリアの民間防衛隊「ホワイト・ヘルメット」、国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が挙げられる。UNHCRは過去に2度の受賞歴がある。

昨年のノーベル平和賞は、コロンビアのサントス大統領に贈られた。25万人もの死者を出した半世紀にわたる内戦を終結させるための取り組みを評価したものである。

(翻訳:エァクレーレン)

Gwladys Fouche and Alister Doyle

[オスロ 27日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中