米自動車大手「金食いEV」開発資金はピックアップトラックとSUVで調達
10月27日、各国が化石燃料車の販売を将来的に禁止する方針を相次いで打ち出し、自動車業界は岐路に立っている。写真はミズーリ州のフォードのピックアップトラック工場で2015年5月撮影(2017年 ロイター/Dave Kaup)
各国が化石燃料車の販売を将来的に禁止する方針を相次いで打ち出し、自動車業界は岐路に立っている。しかし、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)など電気自動車(EV)開発で出遅れた大手メーカーは、米国でのピックアップトラックの販売好調が生み出す利益がテスラなどのEVメーカーを追撃する資金源となっている。
テスラは、年50万台という野心的な販売目標を掲げている。もっとも伝統的なメーカーならほとんどクリアしたような生産面のいくつかの問題を抱え、今年上半期決算は6億6670万ドルの赤字となった。アナリストは11月1日に発表の第3・四半期決算も3億8040万ドルの赤字を見込んでいる。
EVは「金食い虫」であり、大手メーカーがこれまで開発に及び腰だったのはそのためだ。しかし規制当局や消費者からEVの品ぞろえの充実を求める圧力は高まっている。こうした状況下では、ピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)がたたき出す利益は、大手メーカーがEVメーカーと競争する上で有利な武器となりそうだ。
フォードは26日、ピックアップトラック「Fシリーズ」の第3・四半期の平均販売価格が2800ドル上がり4万5400ドルになったと発表した。幅広いバリエーションを有するFシリーズは、1─9月の販売台数が前年同期比11%増の65万8636台となった。
GMのバーラ最高経営責任者(CEO)は24日、第3・四半期に北米事業の利益率が8.3%となったのは、トラック部門の利益率改善が主な要因の1つだと述べた。バーラCEOは数四半期以内に自動運転EVを配車サービス業者向けに投入する計画を明らかにしており、GMの株価は年初来で30%近く上昇している。
GMは今年のフリーキャッシュフローを60億ドル程度と見込んでいる。これは当初予想を10億ドル下回る水準だが、2023年までにEVを20車種以上追加し、株主に70億ドルを還元するという計画を進めるのに十分な水準だ。
GMは8年前の破綻から立ち直り、今では利用可能な資金が173億ドルのキャッシュを含めて、計314億ドルに達している。