世界初、AIで黒田日銀総裁の顔を解析 政策と表情の関係を確立へ
世界初、ビジネス化も
研究会の代表を務める東京大学大学院工学系研究科の和泉潔教授(システム創成学専攻)は、「かつては我々が扱うデータはマクロ指標くらいだったが、AIの進歩によって、今では文字、画像、音声など分析に使えるデータの種類が爆発的に増えつつある。そういう意味ではいかにもAIらしい、非常に面白い研究だと思う」と評価した。
同教授によると、世界的にも経済・金融分野の要人の画像から表情スコアを計測する先行研究については聞いたことがなく、少なくともペーパー(学術論文)になったのは見た記憶がないと言う。
その上で、海外では各国中銀の会見のテキスト(文字)資料を基にAIを用いて指標化するビジネスも既に存在しており、今回の研究についてもビジネス化できる可能性は大いにある、との見方を示した。
「文学」の読解から「感情」の解読へ
今回の共同研究は、大学院で研究室仲間だった水門氏と勇氏が、ともに勤務先とは独立して取り組んだものだが、水門氏の本職は、野村證券金融経済研究所のエコノミストだ。
「われわれエコノミスト、アナリストはこれまで、時に『日銀文学』とも呼ばれる、難解で独特な表現をどう読み解くかに奔走してきた。それがAIの進歩で感情を数値化できるようになり、表情から感情を読み取ろうという新たな段階を迎えた」と意義を語る。
水門氏は今後の展望について、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁についても解析してみたいと語る。既に運用会社から問い合わせが寄せられているという。
一方、日銀広報課は「個別の研究結果にコメントは行なっておらず、答える立場にない」と話している。
(植竹知子 編集:伊賀大記)
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