最新記事

北朝鮮

北朝鮮の電磁パルス攻撃で「アメリカ国民90%死亡」――専門家が警告

2017年10月26日(木)18時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

実行の可能性は低い?

ただ、多くの専門家はEMP攻撃が実行されるかどうか疑っている状態だ。ミドルベリー国際大学院の東アジア不拡散プログラムでディレクターを務めるジェフリー・ルイスは5月、北朝鮮にEMP攻撃を実行する能力があるかと問われると、しばらく笑い続けた。

北朝鮮による核攻撃の実現性が低いことを裏付けるように、9月に米国防総省は、EMP攻撃によるアメリカへの脅威を評価する委員会への資金援助を撤回した。

しかしプライの報告書はそこに水を差す。「アメリカは『大規模な諜報の失敗』で北朝鮮の攻撃能力を過小評価しており、北朝鮮のアメリカ本土への攻撃について真剣になって取り組むべきだ」

北朝鮮の弾道ミサイル、核兵器の保有数、弾頭の小型化、急速な開発が進んでいるとされる水素爆弾そしてEMP攻撃がアメリカに与える脅威は過小評価されていると指摘する。

北朝鮮が使用するのが短距離ミサイルだろうと、貨物船や潜水艦から爆弾を発射しバルーンで高度30キロ~数百キロメートルの高層大気圏まで上昇させて爆発させれば、アメリカを攻撃することは可能と言う。北朝鮮の衛星によってEMP攻撃が行われる可能性もある。

【参考記事】北朝鮮、現在所有するミサイルで米本土を壊滅的打撃 EMP攻撃を検討

有事のアメリカの脆弱性を危惧する声は他でも上がっている。元下院議長のニュート・ギングリッチはこれまでも、アメリカは攻撃を受ける準備ができていないと繰り返し言ってきた。

北朝鮮は9月、ついにICBMに搭載可能な水素爆弾の開発に成功し、EMP攻撃を始めると宣言した。このミサイルの射程は6200マイルで、シアトル~サンフランシスコ~ロサンゼルスなどアメリカの大部分に着弾できるものだとしている。

米朝間では、「ロケットマン(金正恩国務委員長)」、「おいぼれ(ドナルド・トランプ米大統領)」とこき下ろし合う舌戦が過激化。インディペンデントに掲載された記事でプライは、これがアメリカと北朝鮮の緊張に拍車をかけていると懸念する。事態に歯止めはかかるのか。不穏な静寂が続いている。


SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 金正恩SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 金正恩

北朝鮮核危機 日本人が知らない全貌

Chapter 1 KIM JONG-UN

若き指導者の謎多きプロフィール

「暴君」金正恩の虚像と独裁国家の実像

最高指導者が暗殺されない理由

Chapter 2 MILITARY

ミサイル兵器は射程も脅威も拡大中

ミサイル実験「失敗」の真相

「核保有国」北朝鮮と世界は共存できるのか

北ミサイルの本当の実力は

世論に見る米核攻撃の現実味

Chapter 3 POLITICS

独裁者を悩ます中枢幹部の戦い

党大会で本格始動した正恩政権の「頼みの綱」 ほか

詳しくはこちら=>>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中