最新記事

北朝鮮

米朝戦争の落とし穴----誘導兵器不足で必要以上の死者が出る

2017年10月4日(水)19時40分
ジョナサン・ブローダー

誘導爆弾や誘導ミサイルを1週間以内に使い切ってしまう可能性があるかと尋ねると、米議会の軍事専門家は、「そうなっても全く驚かない。第一に、米軍は現時点で多くの精密誘導爆弾を紛争地域で使っている。第二に、こうした兵器の数はそもそもあまり多くない。土壇場になって、足りないことに気づくことになるだろう」。ほかにも、複数のアナリストがこの分析に同調している。

とはいえ、すべての専門家が同意見というわけではない。退役して間もないある空軍幹部は、匿名を条件に取材に応じ、誘導爆弾が1週間以内でなくなるという予測に疑問を呈した。「本当にそんな状態なのか。わが軍には、必要な兵器を必要な場所に運ぶ能力が備わっている」

中東で毎日100~200発投下

しかしヘザー・ウィルソン空軍長官は先日公開の場で、誘導爆弾や誘導ミサイルの不足が切迫した問題になりつつあるとの見解を明らかにした。米軍はイラクとシリアにおいて、これらの兵器を毎日100~200発のペースで使っている。「だが、投下するのと同じペースでは補充できない」と、ワシントンで行われた国防関連の会議で語った。

国防総省は、空爆のペースを維持するために、世界各地の統合軍に配備されていた誘導兵器をを移送せざるを得なくなっている。ISIS(自称イスラム国)への空爆作戦が始まった2014年8月以来、アメリカ軍が使った誘導兵器の数は累計5万4000発以上。元米空軍幹部でその後下院議員に転じたウィルソンは、前述の会議において、「誘導爆弾は手薄な状態にある」と認めた。

米軍はこの問題をかなり前から察知していた。国防総省は2018年度の予算要求で、ロッキード・マーティンが生産する空対地ミサイル、ヘルファイアを、2017年の1500発から、2018年には3600発と、2倍以上に増やす提案をした。また、ボーイングおよびレイセオンが生産する精密誘導装置を備えた小口径直径爆弾も、2017年の4500発から2018年の7300発への増産を求めた。

国防関連企業が必要としているのは、増産を可能にする投資であり、それを可能にする予算の確実な執行だと、ウィルソンは訴えた。ただし、これが実現したとしても、国防産業が実際に増産にこぎつけ、兵器不足が軽減されるまでには少なくとも1年はかかると、2016年に発表された国防総省報告書は述べている。

しかしながらトランプは、最近投稿した一連のツイートが真意だとすると、北朝鮮との対立をさらにエスカレートさせるつもりのようだ。自らの指揮下にあるアメリカ軍トップや外交官が、もっと時間をかけ、慎重に事を進めるよう望んでいるとしても、この大統領は意に介しそうにない。

(翻訳:河原里香、ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月全国百貨店売上高2.8%増、インバウンド・年

ビジネス

午後3時のドルは155円前半に下落、日銀決定「タカ

ビジネス

政策金利0.25%引き上げで新たに1.8%の企業が

ビジネス

少数与党の状況、幅広い共感得られる政策が可能=赤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中