最新記事

乱射事件

ラスベガスのあるネバダ州は、全米でも銃規制が緩い

2017年10月3日(火)16時20分
カラム・ペイトン

事件前日の現場。犯人は奥のマンダレイ・ベイ・ホテルの32階から撃ってきた Courtesy of Bill Hughes/Las Vegas News Bureau

<銃の購入には許可も届け出もいらず、何丁でも買える。届けを出せば自動小銃や機関銃もOK。隠して持ち歩くには許可がいるが、大っぴらに持ち歩くのは自由って?>

ネバダ州ラスベガスで10月1日の夜、アメリカ史上最悪の銃乱射事件が発生した。国内で銃規制がもっとも緩い州の1つであるネバダ州の法律に、厳しい視線が集まるのは必至だ。

ネバダ州の法律では、銃を所有するのに許可は必要なく、届け出も義務付けられていない。個人が所有できる銃の数にも制限はない。全米ライフル協会(NRA)によれば、同州では、連邦法に基づいて届け出を出せば、自動小銃と機関銃を所有することもできる。

また、攻撃用武器や50口径ライフル、大容量の弾倉を譲渡したり所有したりすることも禁止されていない。銃器を隠して持ち歩く場合は地元警察の許可証が必要だが、大っぴらに持ち歩くのであれば許可は不要だ。

ネバダ州でも、2016年11月には銃反対派が一定の勝利をおさめたことがある。個人間による売買やオンラインで銃を購入した場合でも、購入者の身元確認を義務化すべきだとする法案「Question 1」が、住民投票において僅差で可決されたのだ。

ラスベガスの銃撃事件に関するソーシャルメディアでの当初の報道を見るかぎり、単独で犯行に至った銃撃犯スティーブン・パドック容疑者は、大口径の自動小銃を使っていたようだ。銃撃現場を撮影した映像からは、数秒間でかなりの数の銃声が鳴り響いているのが聞こえてくる。

攻撃用武器いったんは禁止したが

そうした武器は、1994年に施行された攻撃用武器規制法で禁止されたが、同法は2004年に失効した。一部の政治家が同法を復活させようと試み、あと一歩のところまで迫ったものの、2012年にコネチカット州のサンディフック小学校銃乱射事件が起きた後も、復活には至っていない。

銃による暴力の撲滅を訴える非営利組織「銃暴力を止める連合」は、銃乱射事件の加害者がそうした武器を好むのは「当然だ」と述べている。「攻撃用武器は、殺傷能力が最大になるよう設計されており、できるだけ多くの人を、できるだけすばやく殺すことを意図している」

一方、銃業界のロビイストたちは、購入時の身元確認を強化しようとする住民投票がネバダ州で可決されたことに非常に批判的だ。Question 1はネバダ州で決議されたものの、法律はまだ施行されておらず、違憲と訴えられて法廷で争われている。また、身元確認を誰が行うのかは明確ではない。

ネバダ州は、1998年から身元確認を州独自で実施してきた。地元紙のラスベガス・レビュー・ジャーナルによれば、新たな法律では、身元確認は連邦捜査局(FBI)が担うと規定されているが、FBI側は、連邦政府による義務づけではないので、身元確認の実施を否定しているという。

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フジHD、純利益7割減 フジテレビ広告収入減で下方

ビジネス

武田薬、通期の営業益3440億円に上方修正 市場予

ビジネス

ドイツ銀行、第4四半期は予想以上の減益 コスト削減

ビジネス

キヤノン、メディカル事業で1651億円減損 前12
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 7
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中