国連演説に見るトランプ政権のナショナリストvsグローバリストの争い
その一方で、いがみ合いがちなトランプ大統領の顧問たちのあいだに意見の相違は見られないと、ある政権当局者は明かした。
「国家安全保障会議の高官らが最も協力して作成した大統領の演説原稿だった」とこの当局者は語った。
同当局者によると、大統領が演説後、ティラーソン国務長官は起立して、主なスピーチライターであるスティーブン・ミラー大統領補佐官(政策担当)に握手を求め、「よくやった」と伝えたという。ミラー氏はバノン氏の同調者で、ナショナリストと見られている。それに比べると、ティラーソン氏はグローバルな考えの持ち主である。
「トランプ氏がトランプ氏であろうとしているだけだ」と語るのは、米大統領選でトランプ氏の選挙参謀を務めたサム・ナンバーグ氏だ。政権内の「ナショナリスト対グローバリスト」の構図は、移民政策のような国内問題においてより顕著になっていると同氏は指摘した。
トランプ政権はまた、外交政策においても複雑なシグナルを発している。
グローバリストであるゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長は今週、再交渉によって米国の利益にとって都合が良くならない限り、トランプ大統領は地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」から離脱する意向に変わりがないことを、同盟諸国に対して明確にしなくてはならなかった。
単刀直入な物言いで知られるトランプ大統領だが、国連では一部の人たちをあぜんとさせたようだ。大統領は演説のなかで、オバマ前政権が同盟国と結んだイラン核合意を非難したほか、世界の一部は「地獄に向かっている」との見方を示したからだ。
民主・共和の両政権で中東問題の交渉役を務めたアーロン・デービッド・ミラー氏は、トランプ大統領の演説について、米同盟諸国は、同大統領が世界で主要な役割を引き受けることに対する慎重さの兆候だと解釈するだろうと指摘。
「最大の問題である北朝鮮もイランも、米国第一主義では解決不可能だ」とミラー氏。演説は、トランプ政権内のグローバリストたちは「使い捨て」で、トランプ大統領を突き動かしているのはいまでもナショナリズムであることを示していると、同氏は付け加えた。
(Jeff Mason記者、Steve Hollan記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)